寝たきり状態でも働く事が出来る世界を作る~OriHimeを活用したリハビリテーション ~

理学療法士
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東京に『分身ロボットカフェDAWN』というカフェがある。

このカフェで接客してくれるのはOriHimeという遠隔操作出来るロボット。

そして、OriHimeを遠隔操作しているのはALS(筋委縮性側索硬化症)や脊髄損傷といった思う様に身体が動かなくなる疾患を抱えた人達なんです。

そういった状態の方々がOriHimeを活用する事で働く事ができ、お客さんに喜んでもらえるだけでなく、お給料をもらう事も出来る。

この事実を知った時に『実際にカフェに行ってみたい』と思うと同時に『これも1つのリハビリテーションの形だな』と強く感じたのを記憶しています。

今回はOriHimeを開発された吉藤オリィさんの講演会に参加し、理学療法士として感じた事を率直にまとめておきたいと思います。

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寝たきり患者さんのその人らしさの追求~リハビリテーション~

分身ロボットカフェにはOriHimeを遠隔操作してバリスタをしている人。

OriHimeを使ってお給料を稼ぎ、母親としていつも助けてくれる娘にプレゼントを贈りたいALSの女性。

特別支援学級の生徒達に採用通知をあげたいという想いから自らその道を作ろうと働く同じくALSの元教頭先生といった本当に様々な背景の人が働いている。

自宅や病院、何なら海外からOriHimeを遠隔操作し、接客し、オーダーを取り、注文の品を届け、談笑したりしている訳です。

私はリハビリテーションを生業とする理学療法士として18年病院で働いて来ましたが、ALSに限らず、長期間寝たきり状態の患者さんが社会参加にまで至ったケースは正直経験した事がありません。

でも分身ロボットカフェでは多くの障害を抱える方々が社会参加するだけでなく、自分の好きな珈琲に関する仕事ができ、稼いだお給料で娘にプレゼントを買う事ができ、生徒達の新たな可能性を作り出せる可能性もある。

思う様に身体は動かなくても、その人らしい生活、生き方を支援出来る上にお客さんにも喜んでもらえる。

分身ロボットカフェの取り組みは『リハビリテーション以外の何物でもない』これが私の率直に感じた事であり、非常に魅力を感じた部分でもあります。

卒業式に出て欲しい~生徒達の想いが届きOriHimeで参加~

ALSになった元高校の教頭先生。

休職されていた教頭先生にどうしても卒業式に出席して欲しいという生徒会の想いに応えたいと校長先生やPTA会長が動き、自宅からOriHimeを利用して卒業式に参加されたそうです。

OriHimeを活用する事で挨拶も行い、卒業証書授与を見守り、OriHimeを使って拍手を送っていたとの事。

教頭先生はこの経験を機に『まだ私に出来る事があるかもしれない』と人工呼吸器を装着する事を決意(ALSの場合呼吸筋も機能しなくなる為に最終的に呼吸器を装着しなければ死に至ります)され、気管を切開された後も声が出せる様にと特別なバルブをつけて講演活動をされていたそうです。

OriHimeと出会った事で教頭として教え子達を送り出す事ができ、その後の講演活動やALSの普及活動にも繋がった。

OriHimeが教頭先生の人生を大きく変えたキッカケになった訳です。

分身ロボットカフェからの卒業~就職~

分身ロボットカフェを訪れた企業の方達がOriHimeを通して働くスタッフの働きを評価した結果、企業に就職するという流れまで出て来ているそうです。

モスバーガーにOriHimeがいたり、NTTの受付にOriHimeがいて、来客された方を会議室まで案内する役割を果たされたりしています。

オリィさんは番組のインタビューで『寝たきりの先を作りたい』と話されていましたが、寝たきり状態であっても、思う様に身体が動かなくなっても、OriHimeを活用する事で自分がそこにいる理由や生きがいを感じる事が出来る人が増えるのかもしれませんね。

1人の理学療法士としては重度の障害を抱えていても、OriHimeというツールを使えばベッド上の生活でも働ける可能性は0ではないという事を忘れないでおこうと思います

OriHimeを活用した孤独の解消

オリィさんがOriHimeを作り始めた理由は『孤独の解消』をテーマに掲げて研究していたからです。

私自身、コロナ陽性に伴うホテル療養を経験し『孤独感』がいかに精神を蝕むかを身をもって感じました。

ホテル療養を経験して感じた圧倒的孤独感についてまとめたブログは↓

ホテル療養を終えた時に1番初めに感じた事は入院してベッド上で思う様に動けず、満足に話をする事も出来ず、コロナ渦の影響で面会に来てもらう事も出来ない。

そんな状況で同じ景色を見続けている患者さんも『孤独を感じているのではないか?』という事です。

同じ様に重度の障害を抱えている人達は家から出る機会も少なければ、コロナ渦で他者とのコミュニケーションの量が一段と減っており、今まで以上に孤独感を感じている可能性が高い。

研究結果により、人は話を聴いてもらうだけで不安が軽減するという事がわかっています。

何故話を聴いてもらうとスッキリするのかをまとめたブログは↓

OriHimeを活用する事で自分自身はベッドの上であったとしても、様々な人と出会い、繋がり、コミュニケーションを楽しむ事が出来る。

OriHimeの存在は孤独の解消にも一役買っているのではないかと私は考えています。

まとめ

今回は吉藤オリィさんの講演会に参加し、OriHimeを活用したリハビリテーションにとても魅力を感じたので、理学療法士として感じた事をまとめておきました。

今後、OriHimeの様な進化したロボットが続々と出て来る事で、その人らしい生活を支援出来る可能性は高まって来ます。

1人の理学療法士として、そういった時代の変化についていける様にすると同時に自分達が高齢者になった時にどんな世界になっているのかが楽しみですね

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