食べたい物を食べるというACP(人生会議)~残る人生をより楽しくという生き方~

理学療法士
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長年病院で働いていると、入院患者さんから

『すき焼きが食べたい』

『喫茶店のコーヒーが飲みたい』

『もっと濃いめの味にして欲しい』

と食に関する色々な要望を耳にします

私自身も食べる事が好きだというのもありますが『美味しい物を食べたい』という欲は年齢を重ねても、思う様に身体が動かなくなっても、多くの人で最後まで残るんだなと実感しています

今回はある在宅医の講演を聴き、人生の最終段階において『食べたい物を食べる』という選択肢があってもいいいんじゃないかという事について考えさせられたので、 私自身の想いも含めて、まとめておきたいと思います

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日本と中国の高齢者の違い

前回の記事で『高齢者は歳を重ねる毎に太った方がいい』という事を書きました

とはいえ、日本の高齢者(在宅高齢者も含む)の平均BMIは18.1と瘦せ過ぎているんですよね

参考記事は↓

高齢者は、年とともに太ろう | ヨミドクター(読売新聞)
写真 幡野広志 年をとれば、やせてきても当たり前と考えてしまうかもしれませんが、実は高齢者の場合には、むしろ太っていたほうが、要介護や死亡のリスクが少なくなることがわかってきました。では高齢者はどれくらい食べればよいのでしょうか。高齢者は軽い肥満の方が死亡のリスクが低い 日本人の高齢者(65~79歳)を11年間フ...

講演の中である中国の施設が紹介されていたのですが、入所者の平均年齢が85.2歳で平均BMIは24.7と多くの高齢者がふっくらとしています

日本と中国の高齢者でここまでBMIに差が出る理由は食事にあります

日本では各々にあわせた決まった量の食事が提供されますが、中国の施設ではおかわり自由

中国では昔からの食文化として『ゲストにはお腹一杯になってもらう』というのがおもてなしだそうです

食事の中身も日本とは異なり、肉類(動物性たんぱく質)がめちゃくちゃ多い

皆さんもご存じの通り、たんぱく質は筋肉の素となる大切な栄養素です

そして、筋肉を維持する為には高齢者は若い世代よりもより多くのたんぱく質を摂取する必要があるんです

以前に人はエネルギー(摂取カロリー)不足になると筋肉を分解してエネルギーを作り出すという事を書きましたが、中国の施設では結果として、

摂取カロリーだけでなく、たんぱく質も充分に摂取出来る事で体重が増え、筋肉量も維持出来るという事になる訳ですね

本当に高齢者に塩分制限やたんぱく制限は必要なのか?

日本では人生の最終段階においても塩分制限、たんぱく制限を口うるさく言われるだけでなく、食べたい物も思う様には食べられず、やせ細っていく可能性がある

かたや中国では塩分制限やたんぱく制限よりも食べたい物をお腹一杯食べる事を大切にしており、痩せるどころか太っていく

例え平均寿命は日本の方が長かったとしても、どちらの生き方が幸せだと感じるかは人によって異なるのではないでしょうか?

その時の身体状況やそこに至るまでの過程にもよると思いますが、80歳を超えてまで本当に塩分制限やたんぱく制限は必要なのでしょうか?

80歳を超えてまで合成着色料等を気にする必要があるのでしょうか?

年齢を重ね、いつ最期の瞬間が訪れるかわからないのであれば

『食べたい物を食べたい時に食べたいだけ食べる』

という生き方があっても良いのではないでしょうか?

『健康な人生をより長く』という価値観があるのであれば『残る人生をより楽しく』という価値観、ACPがあっても良いのではないでしょうか?

病院で元気にではなく、自宅で元気に

私自身は入院患者さんにも『食べる』事を少しでも楽しんで欲しいと思っていますが、医療という現場では色々な制約の下、思う様にいかない事も多いです

人生の最終段階ではありませんが、私が以前に担当していた患者さんにも病院食が食べられず、みるみる痩せていく患者さんがいました

このまま入院期間が長引くと弱ってしまうと感じた私は主治医に現状を伝え、自宅を訪問し、家屋評価と訪問介護等、介護保険によるサービスを整備して1日でも早く自宅に帰ってもらう事にしました

主治医は退院前に身体の事を考え、減塩食や水分制限等を患者さんとご家族に伝えていましたが、自宅にさえ帰ってしまえば何をどう選択するかは患者さんの自由です

私は患者さんのキャラクターから考えて『自宅にさえ帰れれば好きな物を食べてもっと元気になるはず』と予想していましたが、見事的中し、食べたい物を食べ、入院時より動ける様になっていきました

『医師の指示と異なる食生活を送っていたら結局再入院になるじゃないか』

と思われる方もいるかもしれませんが、その可能性を理解した上で何を選ぶかという事もACPなのではないでしょうか?

結果的にご家族も『お父さんの好きな様にさせてあげたい』という意向で、その後も元気に過ごされていたそうです

まとめ

高齢者になっても、例え人生の最終段階になっても『美味しい物を食べたい』という欲を持ち続けている人は多いですし、食べるという行為はQOL(人生の質)にも大いに影響して来る部分だと私は考えます

患者さん自身やご家族の意向はもちろん適宜確認しながらではありますが『残る人生をより楽しく』という生き方があってもいいという事は伝えていきたいですし、

そういった生き方が少しでも実現出来る様にサポートする事がリハビリテーションではないかと考えています

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