低栄養による体重減少は要注意~高齢者は年齢を重ねる度に太った方がいい?~

理学療法士
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昨年ある在宅医の講演を聴いて驚いた事があります

『高齢者は歳を重ねる毎に太った方がいい』

いわゆるBMIが高い程予後が良い『肥満パラドックス』と呼ばれる現象があります

今までにもリハ栄養に関する記事の中で低栄養が持続する事で筋量や体重が減少する事は紹介して来ました

私自身、病院や在宅の現場で働いて来ましたが、太っている高齢者よりも痩せている高齢者の方が多い印象があります

今回は高齢者の肥満と痩せについてまとめておきたいと思います

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痩せと肥満で死亡リスクに差が出る?

実は日本人の高齢者(65~79歳)を11年間フォローした研究では、やせている人よりも太っている人の方が死亡リスクが低くなる事がわかっています

参考資料は↓

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/fcp/whats_fcp/attach/pdf/20191115_01.pdf

身長と体重から算出されるBMI(BMIとはBody Mass Indexの事で、肥満や低体重の判定によく用いられます)では一般的には『22』が標準『25』を超えると肥満『18.5』を下回るとやせとされていますが、

高齢者の場合、女性は軽度肥満(BMI23~24.9)男性は中等度肥満(BMI27~29.9)の人が最も死亡のリスクが低くなります

アメリカでの研究では、高齢者は軽度肥満(BMI25前後)の人が最も要介護になりにくく、中等度肥満(BMI27前後)の人が最も死亡のリスクが低くなっていました

高齢者の場合、標準体形といわれるBMI『22』だと『27』の人と比べて死亡のリスクが1.4倍になる事、BMI『22』の高齢者はBMI『40』の肥満者と同じくらいの死亡リスクがあるという事もわかっています

茨城県で行われた大規模な研究では、年齢と共に少しずつ体重を増やしていくのが、安全な(死亡リスクが低い)歳の重ね方である事がわかりました

60代では男性はBMI『25.1』女性はBMI『22.8』70代では男性『25.5』女性『24.1』が最も死亡のリスクが低くなるそうです

私を含む多くの人が標準と思い込んで来た『22』というBMIよりもかなり大きな数字になります

要するに、高齢者は年齢と共に少しずつ太っていくのが安全な歳の重ね方という事がわかってきているのですが、現場で関わる多くの高齢者はやせていませんでしょうか?

在宅高齢者の平均BMIは?

訪問看護を利用している在宅高齢者の平均BMIは『18.1』だそうです

安全な太めの高齢者はわずか4%、やせとされる『18.5』よりもマシな人を合わせても40%しかいないとの事

日本の在宅高齢者の実に6割はBMI『18.5未満』のやせ過ぎの状態なのです

更にBMI『16未満』の重度のやせの人が28%もいる事もわかっているそうです

上記で紹介した死亡リスクのデータによれば、高齢者のBMIが『16』を下回ると、女性の場合BMIが『22』の人と比較すると何と2.6倍になります

いかにやせている事が死亡リスクを高めるかが理解出来ましたでしょうか?

今でこそ歳を重ねる毎に太った方がいいという事を認識出来ていますが、少なくとも私自身は昨年講演会に参加するまでは高齢であってもBMI『22』が1番良いと思っていました

そういった事実から考えると、未だに多くの医療介護従事者が一切の悪意なくBMI『22』辺りを基準値に考えている可能性はあるのではないでしょうか?

それは即ち医療介護従事者が善意で死亡リスクを高めている事に繋がるのではないでしょうか?

体重を増やす為にはしっかり食べよう

死亡リスクを下げる為には、日本の高齢者の多くは体重を増やす必要がある訳です

その為にはやはりしっかり食べる事が大切になって来ます

一方で病院や在宅の現場で働いていると、多くの高齢者が持病や血圧の問題で

『食べ過ぎない様に』『塩分は控えめに』『健康的な食事を』

と口うるさく言われています

高齢者に限った話ではありませんが、人はいつ最期の瞬間が訪れるかは誰にもわかりません

だからこそACP(人生会議)にも関わる部分だと思うのですが『いつまで制限するのか?』を決める必要があるのではないでしょうか?

ACPに関する 記事は↓

人の死亡率は100%なのですから

『健康な生活をより長く』から『残る人生をより楽しく』に切り替える事も大切なのではないでしょうか?

そして、その切り替えのタイミ ングを決めるのは医療介護従事者ではなく、患者さん自身ではないでしょうか?

まとめ

今回は様々なデータから日本の高齢者は痩せすぎているという事実と高齢者は年齢を重ねる毎に太った方がいいというデータを紹介しました

一方で、体重が増えるという事は股関節や膝関節にかかる負担も増える事に繋がるので、一概に体重を増やせば良いという事ではないという事も頭の片隅に置いておきたいですね

医療介護従事者の中で患者さん、利用者さんの体重の変化をしっかりと把握出来ている人はどの程度いるものでしょうか?

『少し痩せてスッキリしましたね』といった安易な発想、声掛けをしている人も少なからずいると思います

体重が減る事によるリスクをしっかり学ぶだけでなく『何故痩せるのか?』まで考えられる医療介護従事者でありたいものですね

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