機能回復訓練だけがリハビリではない~環境を調整するという視点を持とう~

理学療法士
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以前にも発信して来た事ですが『リハビリテーション』という言葉は医療介護業界においても、非常に残念な事に療法士業界においても未だに勘違いされている事が多い言葉です

世間一般的なリハビリテーションという言葉に対する理解は『機能回復訓練』だと思いますが、機能回復訓練はあくまでもリハビリテーションを実現する為の1つのツールでしかありません

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リハビリテーション実現に必要な2つの視点

リハビリテーションを『その人らしい生活を支援する事』とするならば、失ったまたは低下した機能の回復を目指す方法が1つ

違う視点としては『環境を調整する事』ではないでしょうか?

疾患や年齢によっては、必ずしも機能回復が図れるとは限りません

そうなると、周囲の人の理解(疾患や症状について)を深めてもらう機会を作ったり、社会環境(様々な制度やサービス等)を上手く活用する事も重要になって来るのではないでしょうか?

前者は『社会【に】自分自身をあわせる』

後者は『社会【を】自分自身にあわせる』

といった感じでしょうか?

当事者セラピストとは?

今年、当事者セラピストの1人である山田隆司さんの講演を聴く機会に恵まれました

当事者セラピストとは何らかの疾患を持つ当事者でありながら、セラピストとして活動されている人の事を言います

山田さんの場合は作業療法士であり、シャルコー・マリー・トゥース病という進行性の神経難病の当時者でもあります

山田さんの講演の中でお子さんと運動会の親子リレーに出るという話がありました

思う様に走れない山田さんは『お父さんと一緒に走りたい』というお子さんのお願いを保育園最後の運動会まで断り続けておられたそうです

『(走る事で)笑われたくない』というご自身の想いもあれば、父親として自分が走る事で『子供も笑われてしまうのではないか』という想いもあったのかもしれません

ですが、お子さんの『どうしてもお父さんと走りたい』という子供の願いを断り切れず、悩みながらも親子リレーに出られたそうです

私は率直に興味があったので、講演会が終わってから山田さんに質問させて頂きました

『リレーに出た事による周囲の目や反響(メリットやデメリット)はどうでしたか?』

結果的に山田さんの心配していた部分は杞憂に終わったそうで、勝負に負けた(少し遅れた)事以外に大きなデメリットらしき事はなかったとの事でした

環境調整というリハビリテーション

逆に周囲の大人が声を掛けて来てくれる様になったり、子供達も笑うどころか『一緒に走れて良かったね』と喜んでくれたり、素朴な疑問をぶつけて来る機会が増えたそうです

更に『山田のお父さんは少し足が不自由らしい』という事を子供達なりに理解する事で杖を持ってくれたり、小さなサポートをしてくれる機会も増えたとの事

その話を聞いた時に『まさしく環境調整であり、リハビリテーションだよな』と私は感じました

山田さんご自身の身体機能に何らかの変化があった訳ではありませんが、山田さんとお子さんの周囲(環境)の理解が変化した事で、山田さんの生活が少しだけかもしれませんが安定した訳ですから

理学療法士として伝えたい事

1人の理学療法士として多くの人に知って欲しい事は

『身体機能が1ミリも改善しなくても、動作能力は良くなる』

という事

もっと突っ込んだ表現をするならば

『身体機能が全く変わらなくても、リハビリテーションは実現出来る』

という事

そして、そういった状況を引き出せるのは療法士だけではないという事ですね

周囲の大人や子供達の協力、理解が深まるだけでもリハビリテーションは少し前に進むんですよね

山田さんは自らの病が進行性疾患だと理解した上で、あえてバリアフリーではない家も建てられています

作業療法士としての視点を活かして、こだわりのバリアフリー住宅を建てる事も可能であったにも関わらず、バリアを残した理由、そして今現在どう感じているのか?

車椅子の建築士の方との対談動画も非常に興味深いので、是非一度ご覧になって下さい

まとめ

今回はリハビリテーションを実現する方法の1つである『環境の調整』について書いてみました

1人の療法士として機能回復にこだわりたい気持ちもわかりますが、一方で環境にアプローチした方が即効性が高い部分があるのも事実です

どちらか一方に偏るのではなく対象者のリハビリテーションを実現する為に上手く使い分ける事の出来る療法士でありたいものですね

そして個人ではなく、社会という環境を変える為には周囲を巻き込む必要があるという事も忘れないでおきたいですね

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