療養型病院における理学療法士の役割とは?~リハビリテーションに着目した関わり~

理学療法士
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理学療法士として療養型病院で働き始めて15年程度が経過しました

当時の急性期(今の急性期とは異なり、術後から自宅復帰まで通しで担当出来た)が大好きだった私は維持期(機能的な改善が見込みにくい)に転職する事にすごく悩んだ記憶がありますが、今は胸を張って

『維持期や生活期は面白い』

と言い切る事が出来ます

今の回復期の様に患者さんの身体機能が日を追う毎に改善し、出来る事が増えていく喜びを一緒に共有出来るのも魅力的ですが、現状の身体能力のまま(機能的な改善が少ない為)でいかに動ける環境を作れるのか、他職種やご家族の意見も取り入れながら、最善の策を考える過程が個人的には楽しくて仕方がありません

一方で、療養型病院で働く中で、多くの患者さんの最期の瞬間にも関わらせて頂きました

そういった経験の中で療養型病院(維持期)で働く理学療法士にこそ『リハビリテーション』に着目した関わりが必要なのではないかと考える様になりました

今回は賛否両論があるのは理解した上で、現時点での私自身が考える療養型病院における理学療法士の役割についてまとめてみたいと思います

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リハビリテーションという言葉の意味

まず最初に、このブログでは度々取り上げていますが、非常に大切な部分ですので、リハビリテーションの言葉の意味について簡潔に述べておきたいと思います

勘違いして頂きたくないのは『リハビリテーション=機能回復訓練ではない』という事

正確には機能回復訓練はリハビリテーションを実現する為のツールの1つに過ぎません

解説し始めると間違いなく長くなってしまいますので、私が考える『リハビリテーション』については↓の記事を参考になさって下さい

理学療法と聞いて、皆さんがイメージする様な関節可動域運動、筋力増強運動、歩行運動やADL(日常生活動作)練習ももちろん行いますが、私はその人らしい生活をして頂く事(リハビリテーション)を1番に考えています

具体的に理学療法士として印象に残っている患者さんと関わりを紹介させて頂きます

自宅復帰に向けての環境調整(食事)が上手くいかなかった独居の男性

自転車に乗って日々食堂に行き、ご飯を食べている方でした

体調を崩し、入院するも病院食がどうしても口にあわず、食事を食べない日々が続き、体重がかなり減っていました

精神的に弱い部分があったものの、すぐに医療的な処置は不要となり、このまま入院していても弱るだけという判断から自宅に帰る事に

歩く事は可能でしたが、低栄養が進行した事で自転車に乗るのはリスクが高い、一方で独居で高齢者、認知症もない為に再度認定調査を依頼しても要支援1か要支援2が精一杯ではないかという状況

そういった状況では日々ヘルパー利用で食事を準備してもらうのは困難であり、尚且つ宅食は拒否、皆さんがよく知っている様なお弁当屋さんは配送料が高過ぎると拒否

思う様に打つ手が見つからず、ただただ自宅に帰る日が近付くにつれ『帰ったら自分で首を切ったらええしな』と不穏な事を言い出しはじめる状態

最終的には私が近隣で配送料無料で3種類から選べるお弁当屋さん(高齢者向けではない)を見つけると同時に、出前をしてくれるお店も何店舗か探し出し、患者さんの家が出前の範囲である事を電話で確認し、印刷して渡しました

結果、お弁当屋さんの味が大ヒットし、ヘルパー利用+お弁当屋さんで食生活が安定しました

自宅復帰した後、診察で病院を訪れた患者さんが『何とか生きれてますわ、ありがとう』と笑顔で言いに来てくれた事が印象的でした

介護認定が出るのを待たずに家に帰る事になった独居の男性

動作は全て自立しているも、精神的に不安が強い為に入院して来ました

医療的な処置はほとんどなかったものの、個室に入っていた事で入院費が想像以上にかかった事で『近い内に退院したい』と言い始めました

一方で今までは食事の準備(買い物等)は良くして下さる知人の協力もあり、何とかこなせていましたが、同じ様にこなせる自信もないので『介護保険を使いたい』との事

その当時、介護保険は申請すらしていない状況だったので、急遽認定調査を受ける事になり、認定結果が出たら自宅復帰かなと想定していると

『お金の事も心配だし、どうせ寝ているだけなら結果を待たずに帰る』との事

身体機能的には自立で認知症もなかった為、最悪自立になる可能性が否定出来ず、みなし(介護認定が出るという想定)で介護保険を使うのは控える事に(自立の場合は全額自費負担になります)

私は先程述べた男性の経験があったので、オススメのお弁当屋さんと出前してくれるお店の一覧を渡し、説明しました

それで昼食と晩御飯はクリア出来たのですが、朝食はどうしようという事になりました

入院中に『病院食だけでは足りないから菓子パンやお菓子でも食べたい』という希望があり、主治医のOKが出たので、歩行運動も兼ねて売店まで菓子パンやお菓子を買いに行っていました

そのパンを美味しいと気に入っていた事とパンの賞味期限が長い事を確認していた私は自宅に帰る当日に2週間分くらいパンを大人買いする事を提案しました

そのパンを朝食に食べれば良いのではと考えたんです

本人はOK、主治医のOKも出たので、私が売店と交渉し、3種類のパンを箱買いする事で話がまとまりました

後にも先にも売店のパンを箱買いして自宅に帰った人はその人だけです笑

結果、朝食はパン、昼食と晩御飯はお弁当や出前で安定しました

電動ベッドのリモコンを自分で操作したい高齢女性

既に紹介した2人の男性の様に、自宅に帰る人は自宅での生活が安定する様に環境調整するのが理学療法士の仕事ですが、入院中の生活が少しでもその人らしく過ごせる様に環境を調整するのも理学療法士の仕事であり、リハビリテーションだと私は考えています

腰椎の圧迫骨折と左膝の著名な変形により、枕を挟んだり、ベッドの頭の高さを調整するといったポジショニングを自分でしたい女性でした

前医では電動ベッドのリモコンを自分自身で操作していたのですが、入院したばかりで危険行動があったら困るという病棟の判断でリモコンを渡しておらず、その結果、昼夜問わずナースコールの頻度が凄まじく(主にはポジショニングの依頼)スタッフが疲弊してる状態でした

看護師より『ポジショニングを見て下さい』という依頼を受け、挨拶も含め、部屋を訪れると既に上手くポジショニング出来ていたのですが、ほんのわずかなベッドの角度の調整とかを自分でやりたいという訴えがありました

私が近くで見ておきますのでという条件でリモコンを女性に渡し、ざっと寝返りから座位、移乗動作、ポジショニングの方法を確認すると、全て安定して自分自身で行えていました

病棟の看護師に実際の動作を確認してもらった上で、女性には車椅子に移乗したり、トイレに行きたい時は必ずナースコールを押し、見守りの下で実施する事を約束してもらいました

結果、女性はリモコンを自分で操作出来る様になった事で昼夜のナースコールが激減

スタッフにかかる負担も軽減する事ができ、両者にとってWinWin(両者両得)の状況を作り出す事が出来ました

副産物として、理学療法士として身体に触れる事無く、女性からの絶対的信頼を勝ち取る事にも繋がりました

リモコンを自由に使える様に環境設定したからですね笑

後々の理学療法が実践しやすくなった事はいうまでもありません

3人以外にも終末期の人に対して、自分なりに考えてリハビリテーションを実践して来たつもりです

まとめ

今回は療養型病院における理学療法士の役割について、実体験を含めながら掘り下げてみました

私の関わりが正解だなんて1mmも思っていませんし、特に紹介した2人の男性にした関わりは『それは理学療法士の仕事ではないのでは?』と言われても致し方ないと思っています

ですが、リハビリテーションを『その人らしい生活を支援する事』とするならば、こういった関わりも含めてリハビリテーションであり、理学療法士の仕事ではないのかなと感じている自分もいます

同時に1人で導き出せる方法なんて限られています

医師や看護師、介護福祉士や管理栄養士等とも連携しながら、より良いリハビリテーションを模索し続けていきたいですね

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