理学療法士に対するケアマネジャーの本音~アンケート調査から医療介護連携を考える~

多職種連携
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前回のブログでケアマネジャー(以後ケアマネ)の理学療法士に対するアンケート調査を紹介させて頂き、1人の理学療法士としても非常に考えさせられる調査結果でした。

同時に理学療法士だけでなく、作業療法士や言語聴覚士、他職種が読んでも参考になる内容だと感じました。

退院支援や在宅医療に携わられている方々には改めて目を通して頂きたいですね。

前回のブログは↓

前回は『退院前カンファレンス』と『退院前訪問』についてのケアマネの意見をいくつか紹介させて頂き、その意見に対して個人的な想いを書かせて頂きました。

今回は前回の続編として『サービス担当者会議』と『訪問リハビリテーションにおいて、作業療法士ではなく理学療法士を指定して依頼した事があるか』についてのケアマネの意見を紹介すると同時に、1人の理学療法士としての意見を書いてみたいと思います。

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退院前訪問に対する意見から見えた理学療法士の問題点~リハビリテ ーションとは~

アンケート調査を何度も読み返す中で、退院前訪問に対する意見の中で気になる内容が1つありました。

『その方が在宅生活を安全に送る視点は大切ですが、今まで暮らしてきた家でその人らしく生活できるという視点も大切にしてもらいたい』

在宅生活を送る上で『安全性』はとても重要な視点です。

自宅復帰しました。

当日に転倒、骨折して再入院になりましたでは意味がないですよね。

出来る限り長期的に在宅生活を送って頂く為にケアプランの再考や環境調整はとても大切な関わりだと考えています。

一方で、安全面の視点で考えるならば、通所系サービスを利用して入浴した方が良い場合でも『どうしても家でお風呂に入りたい』という利用者さんもいる。

その場合は福祉用具を活用するという方法もあれば、訪問介護や訪問介護入浴を利用するという方法もある。

定期的に協力を要請でき、ある程度の介護力が見込めるのであれば、ご家族に対して指導するという方法だってある。

利用者さんそれぞれに『こういった生活をしたい』という想いがあるのは当然であり、今まで積み重ねて来た『その人らしい生活』を支援する事が理学療法士の仕事であるリハビリテーションではないかと私は思います。

今までにも何度も触れて来た事ですが『リハビリテーション』という言葉の意味をはき違えている医療介護従事者が多過ぎます。

医療介護従事者にとってとても大切な概念であるリハビリテーションとは何かについて今一度勉強してみて欲しいですね↓

サービス担当者会議について

ケアマネの声としては

  1. 到達出来そうな目標を示して欲しい
  2. 事業所の特徴なのかおとなしい療法士が多い。こちらから意見を求めて具体的に質問しているが求めているご意見が返ってこないので困る。専門職としてもっと積極的に会議に取り組んでほしいところがある
  3. 提案はいいが押し付けには注意してほしい

①に関してはいきなり大きな目標を立てる必要はないと考えています。

利用者さんのキャラクターにもよりますが、海外の研究結果からも人は少しでも前に進んでいる実感がある時にモチベーションが高まると言われています。

あえてすぐにでも到達出来そうな小さな目標を立て、それをクリアする毎に承認する(認める)事で利用者さんも出来る事が増えている事を体感出来ますし、報告書や電話を通じてケアマネに伝える事でケアマネ側も少しは良くなって来てるんだなと感じる事が出来ますよね。

小さな目標を立てるスモールステップの原理とモチベーションに関するブログは↓

もう1つ付け加えるのであれば、筋力増強や歩行の安定性向上といったご家族やケアマネの目には見えにくい目標ではなく、より具体的かつ利用者さんらしい目標設定をしたいものですね。

②に関しては自分に自信がない理学療法士が増えているのかもしれませんね。

その人らしい生活を支援していくにはリハビリテーション専門職だけの力では到底足りません。

サービス担当者会議で関連職種やご家族と直に問題提起、意見交換する中で様々な情報を共有する事が出来ます。

そういった情報の中から新たな問題点が見つかる事もあり、その問題点に対して新たなプログラムを取り入れ、改善する事が出来れば、また1歩その人らしい生活に近づく事が出来るのかもしれませんね。

在宅生活の場においては、関連職種やご家族の関わり全てが利用者さんらしい生活を実現する為のリハビリテーションだという事を認識して頂きたいですね。

在宅生活に限った話ではないのですが、こういった視点からリハビリテーション専門職という言葉にどうしても違和感を感じてしまいますね。

③に関しては先程とは正反対ですね。

1人の理学療法士として意見を言える事は大切ですが、我々が出来る事としては選択肢を提示するまでだと考えています。

その選択肢の中からどれを選ぶのか、当然ながら決定権は利用者であり、ご家族にあるんですよね。

選択肢の中から自分の意思で選ぶ事ができ、その意思を尊重してもらえる。

これも1つのリハビリテーションだと思います。

利用者さんやご家族から理学療法士としての意見を求められた際も押し付けにならない様に慎重に言葉を選んでいきたいですね。

訪問リハビリテーションで作業療法士ではなく理学療法士を指定して依頼した事があるかについて

訪問リハビリテーションに関するケアマネの声を紹介する前に考えさせられる調査結果がありました。

ケアマネがあえて作業療法士ではなく、理学療法士を指定してサービスを依頼する理由です。

いくつかケアマネの意見が紹介されていましたが、端的に言えば『身体機能の維持、向上』を目的とした際には理学療法士を指定して依頼している事がある様です。

ケアマネが理学療法士と作業療法士をどの様に認識しているのかわかりませんが、

身体機能の向上=理学療法士、ADL(日常生活動作)の改善=作業療法士

といった理解なのであれば、必ずしもそうではありません。

ましてや未だにある様ですが、下肢(腰部~足)に関しては理学療法士、上肢(肩~手)に関しては作業療法士というのも違います。

作業療法士であっても、理学療法士であっても利用者さんのリハビリテーションを支援するという目的は同じです。

アプローチ方法に多少の差はあるかもしれませんが、個人的には理学療法士と作業療法士をそんなに明確に線引きする必要はないのではと考えています。

職域、職域と言っているのは療法士だけで、利用者さんやご家族からするとリハビリテーションが実現出来るなら理学療法士でも作業療法士でもどちらでも良いはずだからです。

療法士業界のエゴに利用者さんを巻き込む様な事はしたくないものですね。

最後に一言付け加えるならば、理学療法士として自分達は何が出来るのかをケアマネ含め、他職種に発信していく事が必要なのではないかと考えています。

同じ理学療法士でも呼吸リハに強い人がいれば、福祉用具含め、環境調整に長けている理学療法士もいる。

同じ資格を所有していても強みは人それぞれ違うからこそ、そこを知ってもらう努力が必要なのだと考えています。

この地域では呼吸リハならあの人、環境調整ならあの人といった様にケアマネが認識出来る様になれば、利用者さんにとってより良いサービスが提供出来るのかもしれませんね。

まとめ

今回は『サービス担当者会議』と『訪問リハビリテーションにおいて、作業療法士ではなく理学療法士を指定して依頼した事があるか』について、理学療法士に対するケアマネの本音を紹介しました。

前回のブログでも書かせて頂きましたが、ケアマネも理学療法士に対して思う所はあっても、今後も顔をあわせる可能性もあり、面と向かって意見を言い難い部分はあると思います。

一方でこういった無記名でのアンケート調査になると、思う存分本音が書ける可能性が高い。

つまり、このアンケート調査に書かれている内容こそが多くのケアマネの声であると認識しても良いのではないかと私は考えます。

自分も含め、アンケート調査を読み返しながら、今一度自分自身の仕事を振り返ってみたいですね。

残りの『訪問リハビリテーション』と『通所リハビリテーション』に関する深掘りは次のブログでさせて頂きますね。

率直に理学療法士としてケアマネに意見出来ない、ケアマネが理学療法士に対して気を使ってしまう。

そんな関係性で医療介護連携なんて上手くいく訳がないですよね

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