ケアマネジャーからみた理学療法士とは?~兵庫県理学療法士会アンケート調査から~

多職種連携
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患者さんが医師をはじめとする医療介護従事者に本音を話せない様に、交流のあるケアマネジャー(介護支援専門員)と話をしていると、理学療法士をはじめとするリハビリテーション専門職にも意見をしにくいという声をよく聴いていました。

一方で、患者さんが病院や施設から自宅に帰って生活していく上で、ケアマネジャーは多職種をまとめるキーマンとして、とても重要な役割を果たしており、当然ながら理学療法士も連携する必要性がある職種です。

理学療法士とケアマネジャーの連携についてまとめたブログは↓

今回は兵庫県理学療法士会がまとめている『介護支援専門員からみた理学療法士に関するアンケート調査』を参考にケアマネジャーの本音を知った上で、1人の理学療法士としてどうしていく方が良いのかを深掘りしてみたいと思います。

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介護支援専門員からみた理学療法士に関するアンケート調査とは?

この調査は兵庫県理学療法士会の資料調査部が令和元年11月に兵庫県介護支援専門員協会の各支部393施設に対して、理学療法士に関するアンケート調査を実施したものです。

その内、回答があった168施設の結果を集計し、介護支援専門員が理学療法士に求める事や良かった事、困っている事等について、非常にリアルな声が書かれています。

詳しいアンケート調査に関しては↓

https://hyogo-pt.or.jp/hyogo-pt-wp/wp-content/uploads/e5e065c95112eaabb8b7fc8ec370e44c.pdf

対象を兵庫県の介護支援専門員協会に絞ったアンケートではありますが、全国のケアマネジャーの理学療法士に対する声だと捉えても良いのではないでしょうか?

病院で退院支援(退院前カンファレンスや退院前訪問含む)に関わっていたり、介護保険領域で退院支援やサービス担当者会議に関わっている理学療法士は見ておいて損はないと思います。

面と向かって言われていないだけで、自分達の仕事がこういう風に思われている可能性があるという事を知る貴重な機会ではないでしょうか?

アンケート結果の中から『退院前カンファレンスや退院前情報について』『退院前訪問(家屋評価)について』の2つについてそれぞれ考えてみたいと思います。

退院前カンファレンスや退院前情報について

ケアマネジャーの声としては

  1. 自宅同様の環境で動作が出来るか。自宅の様子に合わせて欲しい(例えば、ベッドはどちらから起きるのか)
  2. 患者さんの出来る事、出来そうな事、逆に出来ない事等、教えて頂けると有り難いです。関節可動域の数字とか、実際ケアマネには不要です
  3. 専門用語を早口で言われるとわかりにくい
  4. カンファレンスは家屋調査でお会い出来ていたり、特別な配慮がいらない方ならケアマネの参加は遠慮したい。特に書類を読み上げるだけのカンファレンスの参加は必要性を感じない。

①に関しては当たり前の事ですよね。

要するに自宅の環境を意識した関わりをして欲しいという事だと思います。

問診だけで家屋環境を全て把握しきる事は極めて難しいと考えています。

だからこそ自宅(退院先)を自分の目で見に行く事が大切であり、コロナ渦で難しいのであれば、ご家族に写真を撮って来て頂く、Zoom等を活用してオンライン家屋評価等が出来れば具体的にイメージが湧きやすいのではないかと考えます。

②の関節可動域の数字(角度)とかを会議やカンファレンスの場で話す理学療法士、実際に耳にした事があります。

『足関節の可動域が5°と制限されており。。。』

ケアマネジャーでも理解に苦しむ内容なので、患者さんやご家族にとっては呪文の様な言葉だと思います。

同じ様に『下肢筋力は3レベルで』とか伝えても全く伝わりません。

理学療法士同士では当たり前に通じる言葉は他職種からみると当たり前ではないという事を頭に叩き込んでおいて欲しいですね。

自宅での生活を考える上で現時点ではこの動作は安定して出来るけれど、この動作はまだ危険性がありますという事を患者さん自身、もしくはご家族にわかりやすく伝えられるとより良いですね。

③の専門用語に関しても、時折現場で耳にする事があります。

要するに専門用語を多用する事で他の参加者を置き去りにしている訳ですね。

難しい内容を難しく伝える事は誰でも出来ます。

難しい内容をいかに噛み砕いて、患者さんやご家族でもわかる言葉で伝えられるかが大切だと考えています。

『伝えた』ではなく『伝わった』を実践出来る理学療法士でありたいものですね。

④の書類を読み上げるだけのカンファレンスの必要性を感じないはとても共感出来ますね。

読むだけならわざわざカンファレンスの時間を作らなくても『読んでおいて下さい』でOKですから。

100歩譲って新人なら致し方ないとして、ある程度の経験年数を積んだら、書類無しでも担当患者さんの事を参加者にしっかり口頭で伝えられる様に努力してみて欲しいですね。

退院前訪問(家屋評価)について

ケアマネジャーの声としては

  1. 利用者本人が想像通りの動きを自宅ではしない事を認識する良い機会だと思います。自宅を見ずにあれこれアドバイスされても溝は深まるばかりです。
  2. 病院で働くPTとは意見があわない事がよくある。身体機能ありきで話され、生活全般(その人の価値観、金銭感覚)を考えない事が多々ある。
  3. 積極的過ぎてPTの範囲を超えてケアマネの領域にまでこられると困る。
  4. 福祉用具の選定や細やかなニーズに合わせた提案は相談員の意見を参考にして欲しい。リハ職の提案を『絶対にこうすべき』と決めつけないで欲しい。意見交換を上手にしましょう。

①の声から推測すると退院前訪問に行っていない理学療法士がまだまだ多いのでしょうね。

退院前訪問に行く習慣があったり、実際に訪問リハ(看護)の現場で働かれている人は理解出来ると思うのですが『(利用者さんが)こうやって動くんだろうな』という想像は見事に裏切られる事も多いです。

教科書通りに動いて下さるとは限りませんし、いくら非効率な動きをしていても認知症で短期記憶が障害されている可能性もあり、指導しても覚えられない事も想定出来ますよね。

退院前訪問に行き、そういった事を目の当たりに出来るだけでも今後に活きて来ると思いますし、とんちんかんなアドバイスをして、ご家族やケアマネとの溝を作る可能性も減るのではないかと思います。

②の身体機能ありきで話をしがちという部分に関しては正直あるあるですよね。

身体機能を評価した上でどの程度動けそうか予測出来る事は理学療法士の強みの部分だと考えています。

一方で身体機能だけで生活全体を考えるのは少々極端な気もしています。

1番大切なのは自宅復帰してどの様に過ごしたいのかという利用者さんの意思。

例えば『家で入浴したい』という希望に対して『身体機能的にも通所リハ等で入った方が安全ですよ』という正論を語るのではなく、少なくとも『どの様な環境になれば入れるだろうか?』をケアマネや他職種と一緒に考えてみて欲しいですね。

③に関してはケアマネの領域という表現がイマイチよくわかりませんが、私自身は利用者さんのケアプランを一緒に考えたいと思う理学療法士なので、少々厄介者なのかもしれませんね。

ただ、自宅での生活が安定するまでの間、訪問リハビリテーション(機能回復訓練)を続けた方が良いという事であったり、身体機能面から自宅で入浴するのであれば、訪問介護の利用を提案する等、理学療法士の視点だからこそお伝え出来る事もあるのではないかと考えています。

医療介護業界あるあるの1つになってしまいますが、ケアプランに関してはケアマネの仕事、リハビリテーションに関してはリハビリテーション専門職の仕事と割り切り過ぎている様にも感じます。

色んな職種が利用者さんやご家族の為にと自分自身を高める努力はしているのですが、他職種と力を併せようとする動きは乏しい様に思います。

要するに各々が『点』でばかり頑張っていて『線』にはなっていないんですよね。

だからこそある程度の節度は守りつつ、理学療法士がケアプランに意見したっていい。

ケアマネがリハビリテーションの提案をしてみてもいい。

お互いがリスペクトしあって、利用者さんとご家族の為により良いプランを考える事が何よりも大切ではないかと私は思います。

多職種連携が上手くいかない理由を考えてみたブログは↓

④の福祉用具の選定に関して相談員(福祉用具専門相談員)の意見を参考にして欲しいという部分に関しては当たり前だと感じました。

リハビリテーション専門職が1番身体機能を把握しているとは思いますが、福祉用具に関しては福祉用具専門相談員がプロです。

福祉用具の知識や活用方法に関しても経験値は上の事が多いでしょう。

だから福祉用具専門相談員の提案に従った方がいいとかではなく、ケアプランの時と同じく、理学療法士からみた視点と福祉用具専門相談員からみた視点を提示した上で『何が現時点での最適解なのか』を考えれば良いだけの話だと思うのです。

私自身は日程的な問題が無ければ、ケアマネ、福祉用具専門相談員さんと私の3人で退院前訪問に望む事が多いです。

そして両者に私の考えを伝えつつ、アドバイスを求めて最終的にどういった福祉用具を導入するかを決断をする様にしています。

理学療法士として恥ずかしいなんて想いは更々なく、今までにもたくさん助けられて来たからこそ私にとってはそういった関わりが当たり前になっていますね。

福祉用具専門相談員さんとの連携に関するブログは↓

まとめ

今回はケアマネジャーからみた理学療法士とはを兵庫県理学療法士会のアンケート調査から考えてみました。

この記事では『退院前カンファレンスや退院前情報について』『退院前訪問(家屋評価)について』の2つの結果について深掘りしてみましたが『サービス担当者会議について』『訪問リハビリテーションにおいて、作業療法士ではなく理学療法士を指定して依頼した事があるか』についても深掘りしてみました

個人的にはこのアンケート調査はとても参考になるなと感じると同時に理学療法士業界の現時点での問題点が多数浮き彫りになっている様にも感じました。

可能であればケアマネジャーだけでなく、看護師や介護福祉士といった関連職種の声も是非聴いてみたいものですね。

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