飲みニケーションは本当に無駄で意味がないのかを心理学的に考えてみた

コミュニケーション
スポンサーリンク

個人的には全く意味がないとは考えていませんが、様々な調査結果を見る限り、飲みニケーションに消極的な人は増えている様です

昨年11月、日本生命が『勤労感謝の日』に関するアンケート調査を行い『職場での飲みニケーションは必要か不要か』という質問を各年代の男女計7774名にした結果が話題になりました

結果としては、2017年の調査開始以来、初めて『不要・どちらかと言えば不要』が『必要・どちらかといえば必要』を上回ったそうです

調査結果は↓

https://www.nissay.co.jp/news/2021/pdf/20211117.pdf

更に注目すべき点は全年代において、ほぼこの割合だったという事

決して、若い世代だけがそう言っているという訳ではないという事ですね

同じ様に2021年8月にテレワーク・リモートワーク総合研究所が全国の20~65歳の男女1035名に対して、コロナ渦の飲み会事情をインターネット調査しています

その結果、元々飲み会に参加しないという人達も含めて6割以上がコロナ渦が収束しても飲み会の頻度を流行前の様には戻したくないと消極的な反応を見せています

調査結果は↓

『飲み会の頻度』コロナ禍以前に戻したい割合は約10%にとどまる。【コロナ禍の飲み会事情に関する調査】
株式会社LASSICのプレスリリース(2021年12月21日11時00分)『飲み会の頻度』コロナ禍以前に戻したい割合は約10%にとどまる。【コロナ禍の飲み会事情に関する調査】

今回はコロナ渦になる前は社会の中で当たり前の様に開催されていた『飲みニケーション』は本当に無駄で意味がないのかという事について深掘りしてみたいと思います

スポンサーリンク

アルコールを飲むと共感しやすくなる

飲みニケーションの目的は人それぞれ違うと思いますが、代表的なのは

『人間関係を深める』

『本音が聞ける』

といった内容ではないでしょうか?

そもそも論として『アルコールの力を借りないと人間関係を構築出来ないのかよ』と思ってしまうのは私だけではないはずです。。。

そういった元も子もない話は置いといて、

東京大学の池谷裕二教授らの研究グループによって、アルコールが共感を促進する事が実験的に証明されています

どの程度のアルコールを摂取すれば共感能力が高まるのかはわかりませんが、相手に対して共感出来る部分が多ければ、必然的に人間関係は深まりやすいのかもしれませんね

また、少量の飲酒では大脳前頭葉皮質の機能低下により、多幸感、多弁、ほろ酔い気分が生じるとされています

アルコールが脳の働きを抑制するだけでなく、ほろ酔い気分も相まって本音や意外な一面が引き出せる可能性も否定出来ません

相手の人間的側面(意外な一面)を知った時に親近感を抱きやすい(ザイアンスの法則)といった心理効果が関与しているのかもしれません

美味しい食べ物が好印象に繋がる

更に飲みニケーションにはお酒だけでなく、料理も付きもの

後輩や部下だけに限らず、相手との関係性を深めたい場合は美味しいお店で飲食を楽しむ事をオススメします

心理学でいう『ランチョンテクニック』が働くからです

医療介護従事者であれば、学会で『ランチョンセミナー』と呼ばれるお弁当付きのお昼の講演会に参加した事がある人もいるのではないでしょうか?

空腹時に美味しいお弁当を食べながら講演を聴く事で、美味しいお弁当に対する好印象が講演内容にも結びついてしまうのです(講演に対して好印象を持ちやすくなる)

つまり、美味しい食事を一緒に食べるだけで、相手に好印象を持ってもらえる確率が向上する訳ですね

プライベートな話を引き出せれば関係性が深まる

アルコールを摂取する事で共感能力が高まるだけでなく、ほろ酔い気分が本音や意外な一面を引き出し、美味しい食事が相手に対する好印象に繋がっていく

その結果、普段は本当に近しい人としかしない様なプライベートな話を上司にしてしまったとします

飲み会が終わり、翌朝酔いから冷めた時に『何であんな事(プライベートな事)を話してしまったのだろう』と違和感を感じます

本来であれば、プライベートな話は相手を信頼しているからこそ話しませんか?

よく知らない人や普段絡みが少ない上司にプライベートな話はあまりしないはずです

でも話してしまった事実(記憶)は消す事は出来ません(酔い潰れて記憶にない場合は別)

そういった時、人は不協和状態(納得出来ない状態)に陥ります

そのままだとストレスになってしまうので、脳が無意識に協和状態(納得出来る状態)に切り替えようとするそうです

こういった一連の流れを『認知的不協和理論』と言います

つまり、先程の例で考えると

『酔っていたから話したのではない、信頼しているからこそ話したのだ』

と考え方を変換させる訳ですね

その結果、相手との関係性が深まる可能性が高まります

初対面の人であっても違和感を感じさせる事なく、質問をする事が出来るフォローアップクエスチョンに関しては↓

『お酒の勢いで』は通用しない

今までは飲みニケーションのメリットだけを切り取って来ましたが、もちろんデメリットもあります

代表的なのはアルコール・ハラスメント(アルハラ)ではないでしょうか?

いわゆる『お酒の勢いで』セクハラ的な関わり(ボディタッチや下ネタ)をして来る人も少なからずいる可能性があります

『ゴメン、ゴメン、酔っぱらっていたから調子に乗ってつい。。。』

といった言い訳をする人がいるかもしれませんが、この手の言い訳は通用しないという事が調査結果からわかっています

イギリスのブラッドフォード大学の心理学講師であるKathryn Francis氏は、人が酔う前と酔った後では道徳問題に対する行動に変化が起こるかを調査しました

具体的には『トロッコ問題の思考実験』を活用したそうで、被験者に対して次の様な問いかけを行います

線路を走っていたトロッコの制御が不能になった

このままでは前方で作業中の5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう

この時あなたは線路の分岐器のすぐ側にいるので、あなたが分岐器を切り替えれば5人は確実に助かる

しかし切り替えた場合、別の路線でも1人の作業員で作業しており、5人の代わりにトロッコに轢かれて確実に死んでしまう

あなたはトロッコを別路線に引き込むべきか?

Kathryn Francis氏は実験を通じて『トロッコ問題の思考実験に対してどう行動するのがより道徳的か』という内容を調べたのではなく

酔う前と酔った後では道徳問題に対する行動に変化が起こるのか』という部分を調査しました

その結果、実験の結果は酔う前と酔った後では道徳問題に対する行動に変化がないという結果が出たそうです

要するに酔っていても、道徳心(物事の良し悪しを判断する力)が損なわれたりする事はないという事になり

『酔っぱらっちゃってつい。。。』が成立しなくなる訳ですね

落語家の立川談志さんが

『酒が(人を)アカンようにするのではなく、その人が元々アカン人だということを酒が暴く』

という名言を残しているのですが、結果的にこの調査結果が立川談志さんの言葉を裏付けているのではないでしょうか?

まとめ

今回は飲みニケーションは本当に無駄で意味がないのかという事を様々な心理効果や調査結果から考えてみました

個人的には飲みニケーションにも意味はあると考えていますが、ちょうど私の価値観に近い著名人の言葉を2つ見つけましたので、最後に共有しておきます

酔ったときに、その人の本性が現れる。飲みニケーションの場は、人間観察・人物評価にもってこいの場なのである。人間を知るのに、これほど面白い、また、役に立つ場はない

株式会社話し方研究所会長 福田健

傷をなめ合うような酒ならよせって言ってんです。少々窮屈でもなにかを吸収できる人と飲む酒、これが価値あり。いい酒は人間を広げてくれますよ

五代目三遊亭圓楽

飲みニケーションは相手の本性を知る良い機会になるという事が1つ

もう1つ大切な事は『誰と』飲むかですね

どうせ飲むのであれば、貴重なお金と時間を『誰と』使うのかは意識してみて欲しいですね

ストレス発散の為にただただ飲むのではなく、学びや気付きに繋がったり、仕事のモチベーション向上に繋がる飲みニケーションであれば参加する価値は充分あるのではないでしょうか?

最後に私を含め自戒を込めてですが、後輩達に声を掛けた時に『行きたくないけど仕方がない。。。』ではなく『あの人となら飲んでみたい(お金と時間を使ってもいい)』と感じてもらえる人になれる様に努力していきたいですね

飲みニケーションにも活用出来るコミュニケーション能力向上に繋がる3つのポイントは↓

コメント

タイトルとURLをコピーしました