寝たきり患者さんの拘縮に向き合う理学療法士に伝えたい事

理学療法士
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今回は寝たきり患者さんの拘縮に対して、真摯に向き合っている全国の医療介護従事者、その中でも特に療法士に向けて伝えたい事があります

それは『(以前の私と同じ様な)勘違いをしていませんか?』という事です

拘縮とは

改めてになりますが『拘縮』とは、寝たきりや長い間身体を動かさないでいた(不動)為に筋肉や皮膚といった関節周囲の軟部組織が伸縮性を失って固くなり、関節の動きが悪くなる状態の事を言います

拘縮は『関節可動域制限』と呼ばれる事もあり、寝たきり患者さんにとって、筋力低下と共に生じやすい問題点(廃用症候群)の1つです

寝たきり患者さんに生じやすい廃用症候群とは?

少し前に『寝たきり患者さんにとってのリハビリテーションとは?』というブログも書きました

簡単に内容を解説すると、寝たきり患者さんの『その人らしい生活を支援する(リハビリテーション)』って何ですかという内容で、個人的には拘縮に対して何もしないという選択肢があってもいいんじゃないか?という事を書きました

私が書いた事が正解だなんて1mmも思っていませんが、次の様な想いを持って寝たきり患者さんの拘縮に向き合っている人は一定数いるのではないでしょうか?

『可能な限り綺麗なご遺体を作りたい』

表現が少し難しく、不愉快に感じた方がおられたら申し訳ありません

もう少しかみ砕いた表現をするならば

『棺桶に入らない状態にはしたくない』

こう考えた事がある療法士の背景にはこういった心理があるのではないでしょうか?

『亡くなった後とはいえ、痛みを感じないとはいえ、骨を折って棺桶に入る様な事になって欲しくない』

少なくとも1人はそういった意識を持って拘縮に向き合っていた療法士を私は知っています

過去の私がそうだからです

世代によって違うとは思いますが、拘縮が強い(特に股関節・膝関節)場合は強制的に骨を折って、棺桶に入れるという事を聞いた事がある療法士はいると思います

医療介護従事者に知っておいて欲しい事

今もそう思いながら拘縮に向き合っている療法士に伝えたい

『拘縮が強くても骨を折る様な事はほぼないそうです』

実は私自身もその事を知ったのはつい最近でして、あるキッカケから沖縄で『株式会社おもかげ』という会社の代表取締役をされている嘉陽果林さんとSNSを通じて知りあい、意見交換する中で知り得た事です

株式会社おもかげに関しては↓

https://omokage.okinawa/

果林さんはご遺体を管理するだけでなく、ご遺族のグリーフケアもされています

グリーフケアとは大切な人を亡くし、深い悲しみを抱える人に寄り添い、支え、立ち直る事が出来る様にサポートしていく事だそうです

療法士の多くは最期の瞬間まで関われたとしても、亡くなられて以降に関わらせて頂く事がほぼない為、聞きなれない言葉かもしれませんね

果林さんとやり取りする中で知った事は昔は『平棺』という皆さんがイメージする様な長方形の棺が大半だったそうですが、今は『山型棺』といって蓋の部分が山型に盛り上がっている形の棺もあるとの事(調べてみると、他にも『かまぼこ型棺』『船型棺』『インロー型棺』があるらしい)

山型棺であれば、多少の拘縮でも問題ないとの事でしたが、療法士として気になるのは拘縮が強い、具体的には膝が立ってしまっている状態の患者さんですよね

その場合は、股関節を回旋(膝を立てた状態で横に倒す)させる等して、棺に入る体勢にした状態(ポジショニング)で固定するそうです

少々無理な体勢であったとしても、ご遺体に掛け物さえしてしまえば、ご遺族は顔しか見れない為に、必然的に骨を折る必要性がなくなるとの事でした

果林さんは少なくともご自身の経験の中で、亡くなられた後に骨を折った方を見た事がないそうです

拘縮に真摯に向き合っている療法士へ

今回の記事を通じて全国の療法士に伝えたい事は拘縮を防ぎきれなかった事に対して『必要以上に落胆する必要はないんだよ』という事です

誤解のない様に再度書いておきますが、他職種やご家族と連携して拘縮が防げる事にこした事はないと思います

『もっと出来る事があったんじゃないか』

そうやって振り返る事も意味のある事だと思います

ですが、いかに多職種が連携しても100%拘縮を防ぎきる事は極めて難しいのではないでしょうか?

拘縮は少しずつ進行するかもしれませんが、その中で目の前の患者さんに多職種で出来る事は何なのか?

それをご家族も含めて考える事(何もしないも選択肢の1つ)が寝たきり患者さんの『リハビリテーション』に繋がるのかもしれないなと今は考えています

まとめ

強い拘縮があっても骨を折る事なく、棺桶に入れる可能性が高い(100%とは言い切れません)という事実を知る事が出来た

だからといって適当に関わればいいやという事ではなく、必要以上に苦痛を伴う様な可動域運動は本当に必要ですか?という事を療法士を含む、全国の医療介護従事者に今一度考えてみて欲しいなと私は思います

コメント

  1. 河津孝一 より:

    鍼灸マッサージ師です。関節拘縮の強い方に対して何もしないという選択肢とても共感いたします。認識レベルも低く自身で決して望むわけがない苦痛の伴うアプローチはそれはリハビリでも何でもないと思います。

    逆に何もしない:手技的には拘った。手を握る、気持ち良くなるようなスキンシップをはかる。
    話をかける、一緒にその場にいる、同じ空気を吸う。孤独じゃないということを伝えるような・・・・そういう関りがあっても良いかと思います。それを医療等の公費で賄うべきかという議論は残るでしょうが、人の尊厳に対して関わる現場での判断は日本的なあいまいな中での対応も許されるのかも。

    それでもセラピーとしての結果を作ることも不可能じゃないかも
    私は意識レベルも低くという場合、家族や管理者から出されたそのようなオーダーに対しては、苦痛を伴わない状態ならば、ベットから端坐位に起こす(一緒にTV見てみる、歌うたう)ことでの、重力をを利用しての荷重と心肺機能循環機能の改善。
    胸郭腹部等の呼吸活動を促す手技での苦痛の伴わないアプローチで対応しています。

    関節可動域も端坐位になることで覚醒させるのか、無理なROM訓練よりも自然に上肢や下肢の痙性が緩くことが多くに見られるます。

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