寝たきり患者さんにとってのリハビリテーションとは?~何もしないという選択肢~

理学療法士
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理学療法士として働き続けて約18年

今もモヤモヤし続けている事があります

それは『寝たきり患者さんにとってのリハビリテーションって何だろう?』という事です

ここを考える上で、明確にしておきたい事が2つあります

1つ目は寝たきり患者さんのイメージの統一

寝たきり患者さんといっても人それぞれによって思い描くイメージが異なると思いますので、今回は入院患者さんでJCSⅢ桁(刺激を加えても目覚めない状態)、意思表示困難、ベッド上動作(寝返り~座位)と日常生活動作(食事や排泄動作等)全介助レベル

そういった状況が長期間に渡って持続しており、回復は見込めない状態とします

2つ目はリハビリテーション=機能回復訓練ではなく『その人らしい生活を支援する』事とします

リハビリテーションとは何かに関しては↓

要するに自分自身では意思表示を含め、何も出来ない患者さんの『その人らしい生活を支援する』って何?という問題提起になります

本来リハビリテーションは療法士だけが支援するものではなく、多くの職種で考え、実践していく事ですが、今回はあえて療法士に絞って私の考えをまとめておこうと思います

関節可動域運動は必ずしも必要ですか?

寝たきり患者さんに多くの療法士がしている事といえば、関節可動域運動ではないでしょうか?

少しでも拘縮、つまり関節が硬くならない様にと他動的に関節を曲げ伸ばししている訳ですが、関節可動域運動を行い、拘縮の進行を少しでも遅くしたとして本当に患者さんにとっての『リハビリテーション』に繋がるのでしょうか?

多くの療法士はこう考えているのではないでしょうか?

拘縮の進行を少しでも遅くする事で二次障害(褥瘡(床ずれ)発生や疼痛増悪、不衛生による悪臭発生等)の予防に繋がるのではないか?

人によっては看護師や介護福祉士の介助量が増えない様にといった考えを持っている療法士もいるかもしれません

私を含む、全国の療法士に今一度問いたい

仮に関節可動域運動を実施する事で二次障害の発生が少し遅くなった、看護師や介護福祉士の介助量が維持出来たとします

それは本当に寝たきり患者さんにとっての『リハビリテーション』に繋がっているのでしょうか?

少しでも拘縮の進行を防ぎたいが為に関節可動域運動を実施している訳ですが、例え意思表示は出来なくても、苦痛な表情であったり、身体が逃避反応(嫌がる様な動き)を起こしたりしていないでしょうか?

『患者さんの為』という想いが大前提にあるのはよく理解出来るのですが、ただでさえしんどいであろう患者さんは痛みに耐え忍んでまで、拘縮を防いで欲しいと思っているのでしょうか?

対人援助職として『患者さんの為に』という想いは大切だと思っています

ですが、一歩引いて考えてみると『一方的な想いの押し付けになってないか?』と感じてしまう自分もいるのです

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ご家族の意向も確認しませんか?

答えのない問題提起だという事は理解しているつもりですが、少なくとも私は本人が意思表示出来ないのであれば、ご家族の意向を確認する必要はあるのかなと考えています

痛みの出ない範囲で動かす事も大切でしょう

一方で、批判を怖れずに言葉にするならば自然に任せて『何もしない』という選択肢があっても良いのではないでしょうか?

例えば、ご家族の選択肢が『何もしない』であったとしても、療法士として出来る事はまだあると思います

クッション等を用いて適切なポジショニング(身体が可能な限りリラックス出来る姿勢を整える)を行う事です

正直な所、療法士が毎日20分関節可動域運動を1回実施するよりも、病棟スタッフ(看護師や介護福祉士)を巻き込んで、随時適切なポジショニングを実施した方が拘縮に対する予防効果は大きいんですよね

拘縮が出来る事によるメリットはないと思いますが、だからといって『拘縮は少しでも防ぐべきだ』という価値観を押し付けるのではなく、選択肢を提示して患者さんやご家族に選んで頂く事が大切なのではと今の私は考えています

まとめ

今回は寝たきり患者さんにとってのリハビリテーションについて考えてみました

寝たきり患者さんに限らず、目の前の人にとっての『リハビリテーション』とは何なのかを考え続けられる、複数の選択肢を提示する事が出来る理学療法士でありたいものですね

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