2月は理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を目指す学生達にとって、1年に1度しかない国家試験のシーズンです
コロナ渦という特殊な環境の中、学生達は当然ながら、送り出す側である養成校側も苦労されている事と思います(そもそも学生を集結させる事さえも感染リスクに繋がる)
私が国家試験を受験した18年前とは内容が大きく変わってしまってはいますが、心理学的にどの様な準備をすれば力を発揮しやすいのか、不安が軽減しやすいのかという点に関しては大きく変わりはないと思います
今回は国家試験に不安を抱える学生達が前日&当日に出来る事を私なりにお伝えしたいと思います
国家試験前日と当日に出来る事
前日に出来る事としては
- アウトプット中心に復習する
- 検索練習をする
- 予想外の展開を想定しておく
- 新しい知識を入れようとしない
当日に出来る事としては
- ありのままの気持ちを紙に書く
- 言語情報を流入させる
- 簡単な問題を解いてみる
アウトプット中心に復習する
以前記事にもさせて頂きましたが、記憶のピラミッドを参考に考えると人に教える、伝えるというアウトプットが24時間後の記憶の定着率を高めます
過去問を見直す(インプット)だけでなく、見直した内容を言葉にして伝える(アウトプット)事を意識してみて欲しいですね
国家試験だけでなく、療法士として働く上でもアウトプットは重要です
国家試験を終えて、ホッと一息ついた時にでも是非『アウトプット大全』を手に取ってみて下さい
探索練習をする
探索練習とは、苦しい思いをして頑張って思い出すという勉強法です
国家試験当日にアウトプット出来る(実力を発揮出来る)状態にしておきたいのであれば『苦労してアウトプットする』という練習をしておいた方が良いという事ですね
国家試験本番と同様に苦労して頑張って頭の中から答えを引っ張り出すという経験が、本番で活きて来るのではないでしょうか?
タフツ大学が行った検索練習に関する研究では、120人の学生を対象に、全員に30個の単語と30種類の画像を記憶してもらう実験を行っています
その記憶をしてもらった後に学生達を2つのグループに分け、片方のグループには検索練習を行ってもらいます
単語と画像の内容を自分でノートに書いてから、答えの部分を隠してひたすら検索練習をするといった方法です
もう一方のグループには、何度も何度も繰り返し読む事によって覚える方法を使ってもらいました
要するに片方のグループは検索練習を中心に学習し、もう一方のグループにはひたすらインプット中心の学習をしてもらいました
翌日、学生達を2つのグループに分けます
一方は、強面の面接官達が見ている前で覚えた内容をテストするグループ
つまり、ストレスやプレッシャーがかかった状況で試験に臨みます
もう一方のグループは、普通にテストを受けて答えを紙に書いて提出するだけでした
その結果、検索練習を行った学生達は、両方のグループにおいて、ひたすらインプットだけを行った学生達よりも、なんと50%も記憶の定着率が高くなっていました
つまり、同じだけの時間勉強しても、検索練習を行ったグループの方が1.5倍も記憶に定着していた事になります
当日に検索練習を行っても良いのですが、いざ上手く思い出せないと『マズい、思い出せない』という焦りに繋がる可能性もあるので、実践するのであれば、前日の方が良いのではないでしょうか?
わからないからすぐに答えを見るではなく、少し思い出す努力をする事が大切なのかもしれませんね
予想外の展開を想定しておく
予想外の問題が出てくる事を事前に想定しておく事も大切だと思います
事前にある程度覚悟が出来ていれば予想外の問題が来ても動揺が抑えられるからです
事前に予測出来れば免疫が出来る
これを心理学的に『接種理論』と言います
高難度の試験問題を想定しておく事で、いざ国家試験が始まった時に想定内の難度であれば逆に『これなら大丈夫』と感じられるかもしれないですよね
国家試験に臨む前に少しでも免疫を作っておきましょう
新しい知識を入れようとしない
国家試験前日に新しい知識を入れようとするのも控えましょう
仮に理解出来なければ、探索練習の時と同様に『この問題が出たらどうしよう』といった感じで焦りに繋がるだけかもしれません
前日に確認するのであれば、嫌気がさす程に眺めて来た過去問で良いのではないでしょうか?
ありのままの気持ちを紙に書く
当日に出来る事としては、モヤモヤしている不安やネガティブな気持ちをありのままに紙に書き出してみても良いかもしれません
これを心理学で『筆記開示』と言い、マインドフルネスの世界では『ジャーナリング』とも呼ばれているそうです
シカゴ大学の研究によると学生達が試験を受ける直前に不安な気持ちをありのままに書き出してもらった所、テストの成績が向上したという結果もあります
頭の中でグルグルしている思考を脳の外にアウトプットしてしまう事でワーキングメモリを解放してくれるイメージですね
パソコンで例えるならば、メモリを解放する事で重たくなっていた状態を改善させた結果、パフォーマンスがアップする可能性が高まります
言語情報を流入させる
言語情報を利用する事で不安を軽減させる事も出来るかもしれません
実は不安というのは、脳の『扁桃体』という部分と関連するという事が脳科学の研究でわかっています
『扁桃体の興奮』=『不安』という図式です
逆に言うと、扁桃体の興奮を鎮める事が出来れば不安を減らせるという事になります
脳機能イメージングを使った研究によると、言語情報が脳内に入ってくると、扁桃体の興奮が抑制され、それに伴いネガティブな感情は収まり、気分も改善され、決断能力が高まる事が観察されています
要するに言語情報を脳に流入させる事が不安の軽減にも繋がる訳です
国家試験の休憩時間をどう使うかは人それぞれだと思いますが、友達と少しだけでも雑談するといった時間も大切なのかもしれませんね
ここに関しては、療法士になってからも忘れて欲しくない事ですね
いかに患者さんの話を聴く事が大切なのかが理解出来るのではないでしょうか?
簡単な問題を解いてみる
まずは簡単な問題をいくつか解いていく事も大切です
真面目に第1問目から取り組み1問目が想像以上に難しかったとしましょう
『1問目からわからない』
『思ってたのと違う』
そんな不安な心境になってしまうのではないでしょうか?
高校野球でも多いですが、注目の好投手が1アウトも取れずに打ち込まれたり、四球を連発し、降板する事があります
そういった投手も1アウトを取ると冷静さを取り戻し、そこから1点も取られないといった事もよくあります
学生さん達も自分自身のパフォーマンスを最大限発揮する為にまずは1アウトを取る
つまり簡単な問題や自信がある分野を1問解くといった事も必要なのではないでしょうか?
まとめ
今回は様々なデータや心理効果から国家試験前日と当日に出来る対策、準備を考えてみました
学生さん達も当日を迎えるまでに出来る限りの努力はされて来た事でしょう
それであれば、直前まで知識量を増やそうとあがくのではなく、自分自身が持っている能力を発揮しやすい環境設定をする事の方が大切なのかもしれませんよ
とはいえ、国家試験は1年に1度
どれだけ準備をしても、環境を整えても不安は完全には拭いきれないと思います
そんな後輩達にせめて応援歌を送らせて下さい
エイジアエンジニア『絶対負けない!』
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