以前の記事で『当事者セラピスト』の1人である作業療法士の山田隆司さんを紹介させて頂きました
改めて当事者セラピストとは言葉の通り、何らかの疾病や障害を抱えながらセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)として活動されている方々の事を言います
当事者セラピストという言葉自体はシャルコーマリートゥース病という神経難病を抱えながら、作業療法士として活動されている山田隆司さんと重症筋無力症を抱えながら、作業療法士として活動されておられましたが、2021年の春に亡くなられた押富俊恵さんが創造された造語だそうです
全国各地にいる色んな当事者セラピスト
私自身、SNSを活用し始めるまでこういった方々が全国にいる事をまるで知りませんでした
『脳卒中患者だった理学療法士が伝えたい、本当のこと』を出版された理学療法士の小林純也さんや『まさか、この私が 脳卒中からの生還』を出版されている言語聴覚士の関啓子さんの存在を書籍を通じてご存じの方はいるのかもしれませんね
私が知る限りでは他にも山田さんと同じ
シャルコーマリートゥース病×言語聴覚士
ギランバレー症候群×理学療法士
脊髄小脳変性症×作業療法士
頚髄損傷×理学療法士
脳性麻痺×理学療法士
リウマチ×作業療法士
脳出血×作業療法士
先天性白内障×作業療法士
発達障害×理学療法士
等、様々な当事者セラピストが全国各地にはいるそうです
今年に入ってから山田さんを含む当事者セラピストの新たな活動として『わたしたちが当事者だったころ(わたころ)』もスタートされています
私が考える当事者セラピストの価値とは?
私自身、当事者セラピストの方々の活動は非常に貴重だと考えています
もちろん当事者セラピストご本人にしかわからないご苦労があると思いますし
『障害はない方がいいに決まってる』
とある当事者セラピストの方が言われているのを聞いた事もあります
一方で当事者セラピストだからこその価値もあると私は考えています
『当事者でもない、当事者セラピストでもないお前が言うな』というご意見もあるかもしれませんが、私なりに数人の当事者セラピストの方達と出会い、意見交換して来た中で感じた事をまとめておこうと思います
私が考える当事者セラピストの最大の強みは
『当事者視点とセラピスト視点の両方を持っている』
という事
具体的には。。。
医療介護業界ではよく患者さんに寄り添うという言葉が使われますが、当たり前ですが当事者の気持ちは当事者本人にしかわかりませんよね
いくらセラピストとして、同じ疾患の人を多数担当した経験があったとしても、じっくり話を聴く意識を持って日々患者さんと関わっていたとしても、100%寄り添うなんて事は不可能です
そこは当事者セラピストに関しても同じかもしれませんが、少なくとも当事者経験のないセラピストよりは寄り添える部分はあるのではないでしょうか?
例え話として正しいかはわかりませんが、私は養成校時代に留年と臨床実習不合格を経験しています
だからこそ今は留年や臨床実習不合格経験に悩んでいる学生達に少しは寄り添えるのではないか、過去の苦い経験は今となっては自分の強みなのではないかと捉えています
当事者も留年や臨床実習不合格で苦しんだ学生も同じ苦しみを知っている人の言葉や考え方であれば耳を傾けてみようと思うかもしれませんよね
当事者セラピストは2パターンに分かれる
当事者セラピストといっても、正確には2パターンに分かれます
幼少期から何らかの障害を持ちセラピストを目指した人とセラピストになってから病に倒れた人です
山田さんの様な幼少期から何らかの障害があった人であれば、身体の使い方のバリエーションが豊富かもしれませんし、より多くのバリアに気付けているかもしれません
そういった知識や経験は間違いなく当事者セラピストならではですよね
関先生の様にセラピストになってから病に倒れた人であれば、バリバリ働いていた自分を記憶しているからこそ、精神的落ち込みは凄まじいのではないでしょうか?
そういった精神的にしんどい状況からいかに立ち直って来たのかという経験は間違いなく当事者セラピストならではですよね
余談ですが、関先生は倒れた時に『この経験を記録する事は後進の為になる』と考え、ご主人に全ての過程を録画してとお願いしたそうです
著書を読み、この事を知った時、そのプロ意識に圧倒された記憶があります
当事者とセラピストの架け橋になれる唯一無二の存在
当事者の気持ちも理解でき、セラピストの気持ちも理解出来る
当時者セラピストは当事者とセラピストの橋渡しが出来る唯一無二の存在ではないかと私は思っています
多くのセラピストは少しでも患者さんの役に立ちたいと思いながら、日々臨床に向き合っていると思いますが、どうしても理解しがたい部分は正直あります
例えば痺れや構音障害等です
日々のコミュニケーションでは全くセラピスト側では支障を感じませんが『違和感がある』と言われる当事者の方って結構おられますよね
そういった医療的な知識が乏しい当事者ならではの微妙な感覚を当事者セラピストは専門的に言語化出来る可能性があります
そういった小さな積み重ねが両者の間にある見えない溝を少しずつでも埋めていってくれるのではないでしょうか?
最後になりますが、当事者セラピストは『誰よりもリハビリテーションを実践出来ている存在』なのではないかとも思っています
山田さんの様に進行性の疾患を抱えていると、どうしても以前は出来ていた事が出来なくなる瞬間が来ます
その度、精神的に落ち込み、悩みながらも『どうすれば自分らしい日々を送る事が出来るのか?』を考 え、実践し続けているのだと思います
まとめ
当事者でもない、当事者セラピストでもない1人の人間が当事者セラピストの価値について好きな様に書かせて頂きました
関先生や山田さんだけでなく、私が実際に出会って来た当事者セラピスト達は本当に魅力的な人達だらけです
1人でも多くの人に当事者セラピストの存在、価値を知ってもらえたら嬉しいですし、若手療法士や学生に対する教育的視点から考えても当事者セラピストの存在意義は大きいのではないかと私は考えています
奇しくもコロナ渦になり、オンライン化が急速に進んだ今だからこそ、全国にいる当事者セラピストの話を聴き、ディスカッション出来る『当事者セラピストサミット』的なイベントがあっても面白いですよね
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