理学療法士として患者さんや利用者さんと関わる際に必要になって来るのがリハビリテーションの目標設定
私自身が目標設定を考える上でポイントにしている事は
『いきなり大きな目標は立てず、すぐにクリア出来そうな小さな目標を細かく立てる事』
心理学では『スモールステップの原理』と言われるもので、先日Twitterである理学療法士さんと目標設定の話になり、スモールステップの原理を紹介しながら記事を書いてくれました
こうやって自分の知識が誰かの役に立てるって本当に嬉しいですし、モチベーションに繋がりますね
せっかくの機会ですので、今回は記事を書いてくれた理学療法士さんとは少し違った視点で、スモールステップの原理を活用した目標設定のコツをまとめてみたいと思います
目標設定をする時のポイント
いきなりですが、どうして大きな目標ではなく、小さな目標を立てるのか?
例えば、元気(全ての動作が自立)に生活していた高齢者が転倒し、大腿骨頸部骨折になり、手術を受けたとしましょう
術後の状態等、個人差は出て来ますが、基本的な最終目標は『自宅復帰』で大きな間違いはないと思います
術後、早期離床を目的に理学療法士として患者さんの部屋を訪ね、挨拶も早々に『自宅復帰に向けて一緒に頑張りましょう』と声掛けをする
先程も書いた様に、最終目標としては『自宅復帰』でも良いと思いますし、患者さん自身も1日も早く自宅に帰りたいと願っている
とはいえ、術後の痛みでろくに動く事もままならない状態で『家に帰りましょうね』と言われても、先が見えない中で家に帰れるイメージが湧かないのではないでしょうか?
『イヤイヤ、家に帰るも何も足が痛くて寝れないし、寝返りすらも一苦労なんだけど。。。』
といった心境になっても何ら不思議はありません
以前にもブログで紹介させて頂きましたが、人は少しでも前に進んでいる(達成感がある)時にモチベーションが高まるそうです
それでは術後の患者さんにどの様に関われば、前に進んでいる感覚、別の言い方をするならば『良くなっている感覚』を体感してもらう事が出来るでしょうか?
そう、すぐクリア出来そうな目標設定をすれば良いんですよね
つまり、最初から自宅復帰という目標を掲げてしまうと、クリアするまでのハードルが高過ぎるんです
具体的に私であれば、ざっと基本動作能力(寝返り~歩行)を評価してからにはなりますが『まずは寝返り出来ますか?』から始めると思います
仮に寝返りは出来そうと判断すれば、寝返りが出来る事を一緒に確認した上で『では、ベッド柵を使って良いので起き上がれますか?』という展開に繋げると思います
その日は出来なかったとしても、数日経過して痛みが軽減して来ると出来る様になる事が多いです
その時には『1人で起き上がれる様になりましたね』とすかさず声掛けをします
承認欲求を満たそう
声掛けをする理由は2つあります
小さな達成感を味わう事でモチベーションを高めたいという事が1つ
もう1つは承認欲求を満たしたいからです
人には個人差はありますが『人に認められたい』という欲があります
今回の患者さんを例に考えるのであれば『1人で起き上がれる様になりましたね』という声掛けをする事で『頑張ってますね』というメッセージが伝わり、承認欲求が満たされる事に繋がると個人的には考えています
アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローによって考案されたマズローの欲求5段階説とは、人間の欲求を5段階のピラミッド構造で表しており、承認欲求はその中でも4番目(上から2つ目)に位置するとても大切な欲求です
だからこそ、目標設定をあえて小さくする事で、承認する機会を増やす事が出来る(同時に達成感も時間出来てモチベーションも向上する)と私自身は考えています
少し極端な比較かもしれませんが、大きな目標である自宅復帰を最初から掲げてしまうと、承認出来るのが自宅復帰出来た時になってしまうのではないでしょうか?
ここに関しても個人差はあるかと思いますが、承認してもらえる機会が多い(定期的にガソリンを入れてもらうイメージ)方がモチベーションを切らさずに頑張れるのではないかと個人的には考えています
ワクワクする事は何なのか?
最後にあえて1つ付け加えさせて頂くならば『自宅に帰った後に何がしたいか?』を明確にする事が出来れば、より目標設定としては有意義かつ患者さんのモチベーションも自ずと高まるのではないでしょうか?
違った表現をするのであれば『ワクワクする事は何なのか?』が明確に出来れば良いですね
元々元気であった人が手術をし、理学療法や作業療法を受けた結果、無事に自宅に帰れた
素晴らしい仕事である反面、ある意味では当たり前の仕事でもあります
ただただ家に帰るだけでなく、自宅に戻った暁には
『大阪マラソンを完走する』
『自転車仲間と淡路島にサイクリングに行く』
こういった自宅に帰った先の目標を立てて、それに向けて頑張る事も大切ではないでしょうか?
要するに自宅に帰る事を『目標』にするのではなく『過程』に出来れば最高ですよね
まとめ
今回はリハビリの目標設定をする時のポイントとして『スモールステップの原理』を中心に紹介させて頂きました
いきなり大きな目標を立てるのではなく、小さな目標を立てて、クリアする度に承認する事で承認欲求が満たされるだけでなく、同時に達成感を味わえる事でモチベーション向上に繋がるのではないでしょうか?
高齢者の目標設定、要するにリハビリテーションを実現する為にはある程度時間を要する場合もあります
リハビリテーションについては↓の記事を参考にして下さい
そういった側面から考えても、モチベーションをいかに保ってもらうのかという視点も重要なのかもしれませんね
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