1人の医療介護従事者として最大限感染対策はしていたつもりですが、コロナ陽性となり、結果的に自宅療養→ホテル療養を経験しました
理学療法士として、10日間療養する事による弊害はある程度予測出来ているつもりでしたが、自分自身が考えていた以上にしんどい経験になりました
ようやく今回の自分自身の経験をまとめておこうという気力が出て来ましたので、振り返ってみたいと思います
風邪症状よりも圧倒的な孤独感
自宅療養、特にホテル療養に切り替えてからが個人的にはしんどかったのですが、1番苦しめられたのはいわゆる風邪症状ではなく、圧倒的な『孤独感』でした
ご存じの方もいるかもしれませんが、孤独は喫煙や飲酒、運動不足よりも寿命に影響する事がブリガムヤング大学の研究にてわかっています
陽性判明後、発熱(最高39.3°)、咽頭痛、全身倦怠感に痰と咳といった風邪症状は出ましたが、服薬の効果もあったのか4日程度である程度症状は落ち着きました(咳は療養後も残っていますが、味覚・嗅覚障害はありません)
逆に考えるならば、4日程度で風邪症状が緩和されたからこそ、孤独感が前面に出て来たのかもしれませんね
自宅療養中は家族の声は最低限聞こえるものの、家族内感染を防ぐ為に顔を合わせる事はなく、自分の部屋に閉じこもり、トイレ以外は部屋から出ない(入浴もしない)生活を送っていました
ただいざとなればベランダに少しだけ出て、外の空気が吸える、他者の声が聞こえるといった外の世界を体感出来るという精神的な余裕はあった様に思います
正直、療養が確定した時はこの時間で本を読んだり、ブログを書いたり、Zoom等を使って、今までゆっくり話せなかった人とコミュニケーションをとろうと思っていたのですが、いざ療養生活に入ると、そういった気力がなくなるだけでなく、頭が回らなくなる感覚がありました
もちろん個人差はあるとは思うのですが、今回の経験を『ブログに書こう』と思い立ったのも療養後、かなりの日数が経過してからである事を思うと、療養が終わったらすぐに元通りの生活という訳にはいかない人も多いのではないでしょうか?
不安を感じた瞬間
陽性判明直後からホテル療養を希望していたのですが、感染拡大による影響で保健所がパンク状態なのもあり、ホテル療養決定の連絡が来たのは、自宅療養になって1週間目の午前中でした
当日の夕方からホテル療養開始になりますので、準備をお願いしますとの連絡でした
ちなみに保健所からの連絡は何度も同じ事を聞かれる事もあり、煩わしく感じる事もありましたが、基本的には優しい電話対応でした
その電話を切り、いざホテル療養の準備を始めた時にふと不安を感じました
『家族の声さえ身近で聞けなくなってしまう』
『4日間もホテルから一歩も出れない』
家族に感染させない為にと自ら希望したホテル療養ではありましたが、孤独感に閉塞感が上乗せされる様な感じがして、自宅を出る前からソワソワ落ち着かない感覚は既にありました
とはいえ『行かねばならぬ』と覚悟を決め、宿泊日数分の着替えの他にPCや本、飲み物やお菓子等をバッグに詰め、送迎用のタクシーに1人乗り込みました
感染対策をされたビニールだらけのタクシーに揺られながら、1週間ぶりの流れゆく外の景色を眺めて『外を自由に動き回れるって、こんなに有難い事なんだ』と感じました
不安が増悪したホテル療養
ホテルに到着し、看護師さん案内の下、簡単な手続きを済ませると足早に部屋に入りました
部屋から夜景が見える綺麗なホテルだったのですが、当然ながら部屋の外は静まり返っています
ホテル療養はとにかく漠然とした不安との戦いでした
具体的にはソワソワして、身の置き所がない(ジッとしていられない)感覚が常にありました
ホテル療養になり数日は夜間に数回覚醒したり、イヤホンを耳に入れて誰かの声を聴いていないと眠れない日々を過ごしました
改めて振り返って考えてみても、不安の原因はよくわかりませんが、とにかく『孤独感』が強かったのだけは間違いないですね
これも孤独感に近いのかもしれませんが『誰にも必要とされていないんじゃないか』という感覚もありました
2020年8月~9月に東京都健康長寿医療センター研究所が実施した調査によると、社会的孤立者の割合はコロナ流行前は21.2%だったのが、コロナ流行中には27.9%であり、6.7ポイント増加していたそうです
その程度は女性より男性で大きく、更に高齢になるほど大きい事も分かっています
精神的健康との関連では『コロナ流行前から変わらず孤立していない者』に比べ『コロナ禍で孤立した者』は孤独感が高く、コロナに対する恐怖感が強い事が明らかになっています
また『コロナ流行前から継続して孤立状態にある者』よりも『コロナ禍で孤立した者』の孤独感の程度は強いものだったそうです
詳細は↓
男である事に加え、1人の医療介護従事者として家族感染を防ぐ為にとって来た行動(積極的な隔離)が『コロナ渦で孤立した者』にあたるのかは不明ですが、男性かつ高齢者はより孤独感を感じやすい可能性があり、より注意が必要ではないでしょうか?
これは私自身の考えではありますが、理学療法士として日々働く中で当たり前の様に患者さんや病棟のスタッフとのコミュニケーションがあります
患者さんやご家族に感謝の言葉を頂いたり、病棟スタッフに頼られる事もあります
仕事場を離れてもSNSを通じて、毎日仲間達との交流があり、家に帰ると家族とのコミュニケーションがある
振り返って考えてみると、多くの人との交流が当たり前の日々を送っていたからこそ、一気に社会的交流がなくなった事に対する精神的なダメージ(不安や孤独感)が大きかったのかもしれません
そういった面からも私にとって日々仕事をする事、他者とコミュニケーションをとる事がいかに大切なのかが身に染みてわかりました
不安が軽減した方法
ホテル療養が始まって2日間くらいは不安が強く、その影響かとにかく1日が長かったですね
迷惑はかけたくないと思いつつも、ホテルにいる看護師さんに不安な気持ちを打ち明ける事もしましたし、ホテル療養を打ち切る事は出来るのかといった相談もしました
精神科医とも話をさせて頂きました
根本的な解決策はないと頭の片隅では理解しているのですが、行き場のない不安をとにかく聴いてもらいたい、気を紛らわせたいという気持ちが強かったですね
実際にホテル療養が精神的に耐えられず、自宅に帰っていく人も一定数いる様で、その気持ちは痛いくらいに理解出来ました
今回の経験を通じて改めて再認識出来たのは話を聴いてもらうだけでも不安が軽減する可能性があるという事
話を聴いてもらうだけでスッキリする理由についてまとめたブログは↓
1人の医療介護従事者として、今回自分の身を通じて経験出来た事(話を聴いてもらうだけでも不安が軽減する)を日々の臨床の中でも活かしていきたいと思っています
私の場合は、SNSを通じて繋がっている仲間達が忙しい中、急遽開いてくれたZoomによる交流が良い影響を与えてくれました
自宅療養→ホテル療養を経験する中で家族とすら顔をあわせず、当然ながら顔を見ながら話をして笑う事なんて皆無でした
オンラインとはいえ、よく知った仲間達の顔を見ながらするたわいもない話と笑い合える時間は本当に貴重な時間でしたし、あの時間がなければいわゆる『コロナ鬱』になっていた可能性も否定出来ません
まとめ
今回はコロナ陽性による自宅療養→ホテル療養を経験して1番苦しかった事、主には孤独感について振り返ってみました
当然の事ながら大きな問題なく自宅療養、ホテル療養期間を終える人もいる事でしょう
ですが、少なからず私の様に苦しんでいる人もいると思うんです
周囲に療養生活をされている方がおられたら、今までよりも少しだけ気にかけてあげて下さい
LINEだけでも送ってあげて下さい
時間があれば話し相手になってあげて下さい
それだけも救われる人はいると思います
コロナで注意すべきなのは風邪症状だけではありません
この記事を通じて、1人でも多くの方が療養、隔離に伴う孤独感にも意識を向けて頂ければ、私自身が苦しんだ経験が誰かの役に立つのではないかと考えています
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