今回は入院すると弱る(下肢筋力が低下する)3つの理由についてまとめておこうと思います
当たり前の内容が多いですが、一般の方でまだまだご存じない方もおられると思いますので
入院すると下肢筋力が低下する理由は
- 寝てたら弱る
- 食べなかったら弱る
- 繋がりがないと弱る
の3つです
前回は医原性サルコペニアと理学療法士として看介護に対して想う事について書きました
前回と少し被って来る部分もありますが、まずもって『入院したら弱る』という事は様々なデータから証明されています
『ひとまず入院したから安心』
こういった価値観の患者さんやご家族がまだまだおられると思いますが、肺炎や骨折で入院すると、退院時には要介護度が1段階以上上がるというデータもあるそうです
要するに介護度だけで考えるならば、身体機能が入院時より弱った状態で退院になる可能性が十分考えられるという事になります
どうしても入院せざるを得ない場合は、出来るだけ早く退院出来る様にする
1番の対策は入院させない事ですね
では具体的に入院すると『何故』弱るのでしょうか?
寝てたら弱る
入院したら弱る最大の理由は『寝ている時間が長いから』
1度入院してしまうと、医療側の『リスク管理』という大義名分のもと、過度に寝かされてしまう可能性がまだまだ高いんです
病棟でよく見かける『(動くと)危ないから寝といて』といった関わりも必要以上に寝かせる事に繋がっている可能性があります
その結果『医原性サルコペニア』に繋がってしまいます
では具体的に寝ているとどれくらい弱るのでしょうか?
人間は30歳を超えると元気に生活していても、1歳年齢を重ねる毎に1%筋肉量が減少すると言われています
一方、高齢者の場合、入院して1日ベッドで寝ていると1日で約0.5%筋肉量が減少するそうです
つまり『2日間寝ているだけで1年分の筋肉量を失う』事になるんです
残念ながら、まだまだ多くの医療介護従事者がこの事実に気付いていません
入院したら病院にお任せではなく、医療を受ける側も自分自身の為、ご家族の為に勉強する必要があるのではないでしょうか?
座るだけでも良い、ベッドを起こすだけでも良いので、まずは寝かせきりの時間を減らす事を心掛けて欲しいですね
食べなかったら弱る
当たり前ですが、エネルギーが不足していると身体は弱ります
絶食や明らかな食事摂取量の低下はわかりやすいですが、点滴の内容をしっかり確認している医療介護従事者ってどの程度いるものでしょうか?
食事はあまり食べれてないけど『点滴入ってるから大丈夫でしょ』
正直こんな捉え方の医療介護従事者って一定数いるのではないでしょうか。。。
少なくとも数年前までの私がそうだったので。。。
少しでも身に覚えがある人、点滴の内容を見た事がない人は1度チェックしてみて下さい
カロリーにして100kcalないものもあるんですよ
少し極端な表現かもしれませんが、ポカリスエット500ml(135kcal)の方がカロリーだけで考えるといい場合もあるのではないでしょうか?
末梢から入れている点滴の多くは補水が目的です
過去にしんどい時に点滴をしてもらって元気になった経験がある人は脱水状態だったのかもしれませんね
少なくとも末梢静脈栄養と中心静脈栄養(IVH等)がどう違うのかくらいは医療介護従事者として理解しておきたいものですね
色々と点滴について書いて来ましたが、これだけは覚えておいて下さい
エネルギー不足(低栄養状態)になると人は筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとします
そんな状態でいくら運動負荷をかけた所で元気になる訳ないですよね
(人との)繋がりがないと弱る
ここだけ少し違った切り口になるかもしれませんが、昨今のコロナ渦においては病棟においても少なからず影響があるかもしれません
数多くの研究で社会的な繋がりが1番健康寿命に影響する事は既に証明されています
急性心筋梗塞で入院した後期高齢者を対象に半年以内の死亡率を比較したデータがあります
対象者に対して『何か困った時にサポートしてくれる方が何人いますか?』という質問をして2人以上いますと答えた高齢者は半年以内に亡くなる方が26%ですが、1人しかいないと答えた人は40%以上が半年以内に亡くなっていました
ちなみに1人もいないと答えた方はなんと70%の方が半年以内に亡くなっていたそうです
コロナ渦は入院患者さんにとって極端に人との繋がりを感じにくい状況を作り出しているとも言えます
オンライン面会をする事が繋がりを感じられる機会になっているのかはわかりませんが、今の状況で出来る事を精一杯やっていきたいものですね
簡単にではありますが、3つの視点から入院したら弱る理由を考えてみました
とはいえ、私1人がこういった事を理解していても、1人で出来る事なんて本当にごくわずかです
知っている者が患者さんやご家族、医療介護従事者対して伝えていく、発信していく、気付けるキッカケを作る事がまずは大切なのではないでしょうか?
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