療法士にとって非常に大切なスキルの1つが問診(情報収集)ではないでしょうか?
問診を通じて、痛みの原因部位を推定したり、ゴール設定のキッカケを探す訳ですが、経験がない実習生が行っている問診は尋問の様になっている事が多い様に感じます
従来型(患者担当型)臨床実習から診療参加型臨床実習(CCS)に変わり、実習生自身が問診する機会は減っているかもしれませんが、療法士になり、現場に出れば必ず求められるスキルである事に違いはありません
今回は臨床実習において実習生が行いがちな問診と注意点を紹介すると同時に実際に働いている療法士の問診との違いを考えてみたいと思います
実習生が行いがちな【点】の問診
多くの実習生は臨床実習に来て、少なからず緊張しているのはもちろんですが
『情報収集しなければ』という意識が強過ぎるのか、情報収集が『点』になってしまっている事が多いです
これは決して実習生に限った話ではなく、臨床に出たばかりの新人療法士も思い当たるかもしれません
では点の情報収集とはどういった感じなのか、具体的な会話例を提示しながら考えてみましょう
実習生:Aさんはベッドかお布団、どちらで寝ておられますか?
A:ベッドですね
実習生:トイレは洋式ですか?
A:洋式です
実習生:家の中に手すりはありますか?
A:廊下と玄関、階段とトイレには付いています
実習生:最近転倒した事はありますか?
A:ありません
実習生:お子さんはお近くにおられますか?
こういった質問→回答→新たな質問→回答といった流れの情報収集をしてしまっている実習生を見かけた事はありませんか?
『出来るだけ多くの情報が欲しい』という実習生ならではの心理は理解出来ますが、少し考えてみましょう
質問者が実習生である事と名前しかわからない人に、いきなり質問攻めにされたらあなたはどう感じますでしょうか?
違和感は感じませんでしょうか?
そして、個人的にはこの質問ばかりの情報収集はあまりにもマニュアル的と言いますか、業務上のコミュニケーションという気がしてならないのです
私がAさんであれば『私は実験台だから。。。』と感じるかもしれませんし、実際に患者さんがそう感じてしまったとしたら、療法士にとって非常に大切な信頼関係を構築しにくくなる可能性も出て来ます
療法士にとって武器になる信頼関係とプラシーボ効果についてまとめたブログは↓
療法士が行っている【線】の問診
先程、例として挙げた問診を『点』とするのであれば、療法士が実践している『線』の問診とはどういった感じになるのか、同じ様に具体例を提示して考えてみましょう
実習生:Aさんはベッドかお布団、どちらで寝ておられますか?
A:ベッドですね
実習生:ベッドなんですね。ちなみにベッドに柵は付いてますか?
A:付いていません
実習生:柵は付いてないんですね。ベッドの高さは大体どれくらいかわかりますか?
A:40cmくらいかな
実習生:40cmくらいですね、ちなみにトイレの便座の高さは大体どれくらいかわかりますか?
私の場合であれば、こういった感じでフォローアップクエスチョンを用いながら、掘り下げていきます
相手に違和感なく質問をする事が出来るフォローアップクエスチョンについてまとめたブログは↓
簡単に解説させて頂くならば、質問→出て来た答えをオウム返しした上で関連する質問をするという流れですね
『点』の問診ではベッド→トイレ→手すりの話と次から次へと話が展開していっていますが『線』の問診ではベッドという回答に対して、必要になりそうな情報を一緒に問診出来ていますよね
例えば、ベッドに関する問診をしている時に『実は最近起き上がりにくくなって来ている』という話があれば、介護用ベッドや据え置き型の手すりのレンタルも視野に入って来るでしょう
『最近少し立ちあがりにくい』という回答があれば、ベッドの高さを調整したり、たちあっぷのレンタルを提案する事も出来るでしょう
患者さんのちょっとした一言に日々の悩み事や今後問題点となり得る情報が隠れていますので、聞き逃さない様にしたいものですね
在宅評価や福祉用具の知識が乏しい場合は、経験豊富な福祉用具専門相談員に相談してみるのも良いと思います
療法士と福祉用具専門相談員との連携についてまとめたブログは↓
まとめ
今回は臨床実習における情報収集で実習生が行いがちなコミュニケーションとして『点』の問診と『線』の問診を紹介させて頂きました
問診に限らず、患者さんとのコミュニケーションも心理学的なポイントを踏まえた上で場数を踏めば、必ず上手くなります
まずは身近な存在からで良いので『線』を意識しながらコミュニケーションをとってみて欲しいですね
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