理学療法士がリハ栄養を学んだ方が良い理由~闇雲な運動負荷は患者さんを弱らせる~

理学療法士
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リハビリテーション栄養(以後リハ栄養)を学び始めて、心から感じている事

『療法士はリハ栄養を学んでおいた方がいい』(本当は全職種(特に医師←強調笑)に必要)

とても残念な事に、1mmの悪意はなく、良かれと思って患者さんを弱らせている可能性すらあるからです

前回は寝たきり患者さんの拘縮(関節可動域制限)に向き合っている療法士に向けてのブログを書きました

今回は寝たきり患者さんの筋力低下が進行する理由の1つでもあるリハ栄養についてまとめておきたいと思います

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リハ栄養の知識がない場合

例えば、易疲労感(すぐに疲れやすい)が顕著な大腿骨頸部骨折術後患者さんについて、栄養学の知識がある場合と栄養学の知識がない場合に分けて考えてみましょう

療法士に栄養学の知識がない場合、易疲労感の原因は、入院前からのフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)と入院後の安静臥床による体力低下と判断しやすいのではないでしょうか?

その為、理学療法を十分に行えば易疲労感を改善出来ると考えて、過度な理学療法を実施する事になります

その結果、低栄養やサルコペニア(加齢による筋肉量の減少および筋力の低下)が悪化して生活機能が改善しないにも関わらず、十分な理学療法を実施したので『これ以上改善する事はない』と判断する事に繋がってしまう可能性があります

リハ栄養の知識がある場合

一方、栄養学の知識がある場合易疲労感の原因は、入院前からのフレイルと入院後の安静臥床だけでなく、食事摂取量が少ない事や骨折、手術による侵襲(外傷)と判断出来るのではないでしょうか?

その時点での栄養状態や栄養管理によっては、あえて軽めの理学療法を行うという判断も可能となる

また、サルコペニアが全身だけでなく、嚥下筋(飲み込む為の筋肉)や呼吸筋(呼吸する為の筋肉)にも生じやすい事を考えて、運動器疾患であっても嚥下リハや呼吸リハの必要性を認識する事も出来る

『患者さんの為に』

『患者さんに少しでも良くなって欲しい』

こういった熱い想いを持って働いている療法士は多いと思います

しかし、最初にもお伝えした様に、栄養学の知識がないと良かれと思って取った行動(理学療法)が皮肉にも患者さんを弱らせる可能性があるという事を知って欲しいのです

今の私は少しばかりリハ栄養を学んだからこそ、こういう視点で記事が書けていますが、数年前までは『患者さんの為に』と思って患者さんを追い込んでいる側でした

恥ずかしながら療法士としてようやく気付けたからこそ、少しでも早く私と同じ様に良かれと思って患者さんを追い込んでしまっている療法士を減らしたいのです

低栄養になると筋肉量が低下する

低栄養といっても、単純に食事摂取量の低下だけでなく、不適切な栄養管理による低栄養骨折、手術による侵襲等から生じる急性(炎症)による低栄養COPD(慢性閉塞性肺疾患)の様な慢性的な(炎症を伴う)疾患による低栄養と多岐に渡ります

療法士として覚えておかなければならないのは、理由は何であれ、人間は低栄養(エネルギー不足)になると筋肉を分解してエネルギーを作り出すという事

具体的には低栄養になると、肝臓、筋肉内に貯蔵されたグリコーゲンが枯渇する為、体脂肪や筋蛋白の分解から『糖新生』を行い、エネルギーを産出します

つまり、体重や筋量が低下するという事ですね

病院で働いた経験がある方であれば、肺炎→安静臥床+絶飲食という流れを目にした事があるのではないでしょうか?

今一度この状況をリハ栄養の視点で掘り下げてみましょう

肺炎は当然ながら急性炎症の状態の為、消費エネルギーが増えます

呼吸苦の為に呼吸筋を過剰に使う事でも消費エネルギーが増えます

更に絶飲食という事はエネルギー摂取量が極端に少ない事は容易に想像がつきますよね

一方で、人間はベッドで安静にしていても、基礎代謝量といって生きる為にエネルギーを使い続けているんです

そういった様々な要因が合わさった結果、消費エネルギーがエネルギー摂取量を大きく上回る為、筋量が低下する事に繋がります

ここに『医原性サルコペニア』(過度な安静による筋力低下)が加わり、肺炎後は劇的に弱りやすい環境であると考えられます

こういった背景を理解せずに、過度な筋力トレーニングを実施するとどうなるか、ここまで読んで頂けた方なら理解出来ると思います

過去に担当したCOPD患者を振り返る

話を聞いてみると、食事摂取量が低下気味で4ヵ月で約15kg痩せた

『段々息切れがひどくなるし、足元も頼りなくなって来たから頑張って運動しているんですが。。。』との事

今の私であれば、食事摂取量の低下、著しい体重減少、COPD、頑張って運動している

この4点からまずは低栄養を疑う事が出来ますが、栄養を学ぶまでは『どうやったら今以上弱らない為に活動量がキープ出来るか』くらいしか考えなかったかもしれません

私のリハ栄養に対する考え方が正しい、正しくないかは別にして、栄養学を学ぶ事で患者さんの訴えや症状に対する臨床推論(仮説)の幅は広がるのではないかと私は考えています

その結果、良かれと思って患者さんを追い込むという皮肉な展開が減り、効率的な理学療法が行える事に繋がるのではないでしょうか?

まとめ

今回は理学療法士がリハ栄養を学んだ方が良い理由についてまとめてみました

リハ栄養に少しでも興味がある人はリハビリテーション科医の若林秀隆先生が監修した『リハビリテーション栄養ポケットガイド改訂版』が非常にわかりやすいので、学び始めるキッカケとして↓の株式会社クリニコに連絡して取り寄せてみて下さい(無料)

パーミッション画面|医療・介護従事者向け情報|株式会社クリニコ
パーミッション画面。森永乳業グループの病態栄養部門、株式会社クリニコでは介護食・嚥下食・流動食・医療食・栄養補助食品・プレ・プロバイオティクス食品の製造・販売を行っています。

正直、私がそうであった様に栄養に興味のない療法士はまだまだ多いと思います

善意で患者さんを追い込んでいる療法士を見かけたら

『ご飯食べれてないみたいですが、運動しても大丈夫ですか?』

『1か月で体重が5kgも落ちていますが、積極的に運動しても大丈夫ですか?』

とリハ栄養の重要性に気付いている人が声を掛けてやって下さい

そうでなければ不利益を被るのは患者さんですから。。。

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