今回は私自身が経験した、理学療法士として忘れる事の出来ないリハビリテーションを1つ紹介させて頂きます
正直ブログにするか迷ったのですが『こういったリハビリテーションの形もあるんだ』という事を多くの人に知ってもらいたいですし、貴重な経験を共有する事で1人でも多くの療法士に『私にも実現出来るかもしれない』と感じてもらえるのであれば本望です
私が紹介したいリハビリテーションとは
『入院患者さんと一緒にお孫さんの結婚式に参加した』
という経験です
結婚式当日を迎えるまでどういった過程を踏んだのか、結婚式当日はどの様に過ごしたのかという事を可能な範囲で前半・後半に分けて共有出来ればと思います
理学療法士としてリハビリテーションという言葉について考えてみた記事は↓
お孫さんの結婚式に参加したい
『お孫さんの結婚式があるんだって』
その話は急に私の元に舞い込んで来ました
急な腰痛増悪で動けなくなり、話を聞いた時点では寝返りするのがやっとなレベルでした
年齢的にも結婚式に参加出来るのは今回が最後かもしれないという事、患者さん自身の『参加したい』お孫さんの『参加して欲しい』という強い想いがあった事もあり、当初から『何とか参加出来る環境は作りたい』と考えていました
ただアプローチし続けてもなかなか腰痛は改善してこず、結婚式までの日数を考えても自宅復帰は困難と判断、入院したまま、更に車椅子レベルの状態でどの様にすれば参加出来るのかを考え始めました
同時にネットを活用する事でお孫さんとのチャットでのやり取りを開始、患者さんの身体状況を伝えつつ、どの場面に参加してもらいたいのか等、情報収集を始めました
当然ながら結婚式に参加出来る、出来ないの最終判断は主治医が判断します
幸い『何とか結婚式に参加出来ないかな』という考えがある医師でしたので、環境設定次第で参加出来る可能性はあると信じて前向きに準備を進めていました
お孫さんの想いをサポートしたい
患者さんの今後について主治医から説明があると聞いた私はお孫さんと連絡を取り
『参加して欲しいというお気持ちがあるのであれば、明日主治医にお孫さんの素直なお気持ちを伝えてみて下さい』
と伝えました
理学療法士である私の言葉よりもお孫さんの言葉が1番医師の心を動かす効果があると考えたからです
私自身も説明の席に同席させて頂き、患者さんとお孫さんの想いが叶う様に微力ながらサポートさせて頂きました
コロナ渦だという事もあり、医師が迷うのは当然の事です
最終判断は結婚式2日前にする事、人混みは避ける等、条件付きながら現時点では参加OKとの判断が出ました
お孫さんの言葉と涙に『少しでも参加して欲しい』という強い想いを感じました
私はすぐに主治医に『結婚式当日もサポートしたい』という考えを伝え、ボランティアであれば参加OKという事になりました
この時点で結婚式まで約3週間
私自身、維持期・生活期で働いて15年になりますが、リハビリテーションの視点を大切にしながら患者さんと関わって来たつもりです
終末期リハビリテーションに関する考えは↓
とはいえ、入院患者さんと一緒に結婚式に参加した経験等、当然ありません
移動手段の確保と同行スタッフ
まずは当日の移動手段として介護タクシーが真っ先に頭に思い付きました
実際に介護タクシーを活用する事の多い、ケアマネや外来の受付に評判の良い介護タクシーを教えて頂くと、何と救命救急士として20年間働いた事がある人が介護タクシー事業をやっているとの事
年齢的な事を考えても急変する可能性は0ではない事を考えると非常に心強いと感じ、即依頼する事になりました
次は同行してくれる看護師の確保
知らない看護師に依頼するのは怖いと感じた私は繋がりのある看護師に連絡を取り、信頼出来る看護師が快くOKしてくれました
こういった時に様々な職種と交流する中でコツコツ積み上げて来た人脈が活きますね
移動方法について
これで移動手段と同行スタッフの問題は解決
次は移動方法を考えました
その時点で思いついた選択肢は2つ、リクライニング式車椅子とストレッチャー
選択に悩んでいた時に腰痛に詳しい作業療法士とシーティングに詳しい理学療法士の知り合いがいる事に気付き、アドバイスを求めるとティルトとリクライニング機能がついている車椅子を紹介してくれました
正直シーティングや車椅子選定に対する知識が乏しかった私にとって非常に有り難いアドバイスであり、患者さんを通じて、車椅子について考える機会にもなりました
同時に結婚式場のプランナーさんとも連絡を取り合い、当日のスケジュールを再確認するだけでなく、車椅子で移動するにあたり、エレベーターの奥行き等、必要な場所の幅を調べてもらいました
サイズ的に対応出来る車椅子が決まったら、病院から結婚式場までの移動時間を調べ、その間車椅子に座り続けられるのか、腰痛は増悪しないのかを実際に何度か車椅子に乗って確認しました
最初はあまりリクライニングしない事に不安を感じていたのですが、ティルト機能がここまで腰部の負担を軽減するとは正直知りませんでした
最終確認
条件がある程度整った上で、介護タクシーに最終見積もりを出して頂き、同行する看護師の謝礼も含め、大まかな金銭負担額を提示し、ご家族に了承を得ました
お孫さんとは当日、挙式前の写真撮影の部屋で合流し、患者さん、お孫さん、ご主人さんの3人で写真を撮る事、撮影後、お孫さんが宿泊されている部屋に移動し、休憩しながらオンラインで挙式の様子を見る事、挙式後の親族での集合写真に合流する事を決めました
病棟には前日に便処置をしてもらう事、出来る限り結婚式に近い日程で入浴してもらう事、当日の痛み止め服用時間を車椅子座位にあわせて少しずらす事をお願いしました
こういった決定事項は適宜主治医に報告、結果的に結婚式2日前に主治医とご家族と話をした結果、当日参加出来る事が決まりました
まとめ
今回は結婚式前日までの過程を紹介させて頂きました
当日の事を紹介した続編記事は↓
日常業務をこなしながらの準備は少々慌ただしかったですが、それ以上にワクワクしていた事を覚えています
こういった過程も残しておく事で誰かの背中を後押し出来れば嬉しいですね
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