今までにもリハビリテーション栄養(以後リハ栄養)について記事を書いて来ましたが、今回は改めてリハ栄養の定義とリハ栄養において大切な『リハからみた栄養管理と栄養からみたリハ』についてまとめておきたいと思います
リハ栄養という名称ではありますが、決してリハ職だけでなく、全医療介護従事者に知っておいて欲しい知識だと考えています
リハ栄養の定義
リハ栄養とは『ICF(国際生活機能分類)による全人的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因の評価、リハ栄養診断、ゴール設定を行ったうえで、障害者やフレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・フレイルを改善し、機能・活動・参加・QOLを最大限高める「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」である』と定義されています
また、リハ栄養とは別に栄養理学療法という概念もあり、
栄養理学療法とは「対象者の機能・活動・参加、QOLを最大限高めるために、栄養障害、サルコペニア、栄養摂取量の過不足を把握した上で状況に適したゴールを設定し、理学療法を実践するものである
それにあたって、理学療法士は管理栄養士などの多職種と栄養評価や理学療法評価を共有し、活動量、筋緊張、不随意運動などを考慮した栄養管理と栄養理学療法を検討する」と定義されている
この2つの定義に共通している事の1つが『機能・活動・参加・QOL(生活の質)を最大限高める』という事
個人的な解釈としては栄養を学ぶ事でリハビリテーションが実現しやすくなり、その結果、QOLが最大限高まるのではないかと考えています
リハビリテーションに関しては↓
リハからみた栄養管理とは?
リハ栄養を学んで来て、非常に大切だなと感じているのが
『リハからみた栄養管理』と『栄養からみたリハ』の考え方
まずは『リハからみた栄養管理』について
例えば、安静臥床時より理学療法で運動療法を行っている時の方がエネルギー消費量(消費カロリー)は大きいですよね
理学療法を開始する前の栄養状態が摂取カロリーと消費カロリーが等しい場合、運動によって消費カロリーが増える分、摂取カロリーを上乗せする必要性が出て来る訳です
全患者の理学療法実施時に管理栄養士が立ち会えれば、自然とカロリー調整はしてくれると思いますが、そんな展開が現実的ではない以上、理学療法による消費カロリーを最も把握出来ているのは理学療法士という事になります
更に、日常生活での活動量、筋緊張、不随意運動もエネルギー消費量に大きな影響を与えます
弛緩性麻痺で筋緊張が低い場合と固縮・痙縮で筋緊張が高い場合では、後者の方がエネルギー消費量が大きくなります
振戦、アテトーゼの様な不随意運動、クローヌスや運動失調による動作時のふるえも認める場合と認めない場合ではエネルギー消費量は異なります
要するに固縮や振戦がある様なパーキンソン病等はエネルギー消費量が大きい訳ですが、こういった視点に関しても管理栄養士より理学療法士の方が詳しい訳です
こういった視点が『リハからみた栄養管理』になります
栄養からみたリハとは?
一方で『栄養からみたリハ』に関しては、既に別記事でも書いて来ましたが、明らかに低栄養で、弱っている患者さんの場合、まず必要なのは運動療法ではなく栄養管理です
以前に書いたリハ栄養に関する記事は↓
病院では困った時に管理栄養士さんに相談出来るかもしれませんが、在宅の現場には管理栄養士はいない事が多いので、療法士が主治医や看護師、介護福祉士等と連携しながら利用者さんの身体状況を評価して、どこまで関わるべきか(運動負荷をかけるべきか)を判断する必要性があります
こういった視点が『栄養からみたリハ』になります
理学療法士として気付けた事
療法士として利用者さんを元気にするには、効率的にリハビリテーションを実現する為には、とにもかくにも『栄養が土台』
恥ずかしながら理学療法士として10年以上働いて、ようやく気付けた事です
今だからこそ伝えられる事ですが
『運動すればする程痩せていく(弱っていく)』
『ご飯は食べれてるのに痩せていく(弱っていく)』
その時点で違和感を持って下さい
『もう歳だしなぁ』で片づけるのではなく『消費カロリー(運動量)と摂取カロリーのバランスが崩れているのではないか?』と疑ってみて下さい
今までと食事摂取量や活動量が変化していないのに痩せ始めた場合は『何かしらの炎症疾患がある可能性がある』と疑ってみて下さいね
最後に勘違いして頂きたくない事を1つだけお伝えさせて頂きます
先程も書きましたが、明らかな低栄養の患者さんに必要なのは運動ではなく、栄養です
ですが、栄養状態や栄養管理が悪くても、栄養だけで理学療法を中止する基準にはなりません
理学療法の内容を少し考え直して欲しいという事ですね
まとめ
リハ栄養を学んで、理学療法士の良かれと思って実施した理学療法が患者さんの生活機能を悪化させる可能性がある事を知りました
多くの患者さんは私達の理学療法プログラムを信じ、頑張って下さいますよね
その期待や頑張りを悪い意味で裏切らない為にも最低限の栄養に関する知識を学ぶ必要があると思いますし、気付いたからには少しでも周囲に伝えていかなければと思っています
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