終末期でもリハビリテーションを諦めない~理学療法士として何が出来るのか?~

理学療法士
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高齢者と関わる事の多い理学療法士は終末期の患者さんを担当する事もあります

終末期とは、加齢や病気、障害の進行に伴い、命を落とす事を回避する方法がない状況

要するに、最期の瞬間が近づいて来ている期間と考えて頂いて良いと思います

2018年には全国介護・終末期リハ・ケア研究会が終末期リハビリテーションを

『加齢や傷病および障害のため、身の保全が難しく、かつ生命の存続が危ぶまれる人々に対して、最期まで人間らしくあるように支え、尊厳ある最期を迎える権利を担保する包括的なリハビリテーション活動』

と定義しています

理学療法士としてリハビリテーションとは何かを改めて考えてみました

今回は恥ずかしながら私が今までに取り組んで来た終末期リハビリテーションをいくつか紹介させて頂きます

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大好きなカツ丼を食べたい末期癌の男性

高齢の末期癌とはいえ、認知症はなく、嚥下機能(飲み込む力)も保たれている方でした

食欲はあるも『病院の食事は美味しくない』とあまり食べませんでした

『家に帰ったら熱々のカツ丼が食べたい』とよく言われていたので、私は密かにカツ丼を出前してくれるお店を調べていました

一方で一時帰宅の話も出ていた為『その時にカツ丼を食べてもらえばいいか』と安易に考えていました

そんな矢先に容体は急変、カツ丼を食べてもらう事は叶いませんでした

患者さんに熱々のカツ丼を食べてもらいたい

私なりに考えたリハビリテーションは失敗、即動けなかった事に後悔の念だけが残りました

終末期の人に対して『その時に』『いつか』という甘い考えを持つのはやめよう、言うからには即動こうと思わされた経験でした

温かいおうどんが食べたい末期癌の女性

末期癌とはいえ、私の母親より若い女性でした

ある日部屋を訪れるとカップラーメンを食べておられました

『病院の食事は食が進まなくて。。。』

『何か食べたい物や好きな物はありますか?』と質問すると『温かいおうどんが食べたい』との事

カツ丼を食べてもらえなかった過去が脳裏をよぎると同時に、若いだけに進行が早い可能性もあると考え、すぐに主治医に『出前を取ってもいいですか?』と相談

幸い許可が出たので『温かいおうどん食べましょう』と女性に伝えると笑顔で『ありがとう、楽しみ』と言われていました

翌日女性は『カレーうどん』を注文するも、運悪く『今はやっていない』と言われたそうで、少し残念そうにされていました

『明日にでも別の温かいおうどんを注文しましょう』と伝えた翌日に体調が悪化、食事が食べられない状況になり、最後まで温かいおうどんを食べる事は叶いませんでした

私は思いました

『私がカレーうどんがやってない事を事前に確認しておけば、1度はおうどんが食べれたかもしれない』

出前が取れる、温かいおうどんを食べてもらえる状況を作れた事に自己満足してしまっていた可能性は否定出来ません

あらゆる可能性を想像出来ない、実現する瞬間まで細やかな配慮が出来ない自分自身に絶望した経験でした

前回に引き続き、リハビリテーションは上手くいきませんでした

喫茶店で珈琲が飲みたい末期癌の女性

認知症はないものの、癌が下肢の骨に転移して、いつ病的骨折(わずかな外力で骨折する)してもおかしくない女性でした

話を聴いていると珈琲が大好きで、娘さんが珈琲を持参してくれるも『やっぱり喫茶店で珈琲を飲みたい』と希望されていました

全介助で車椅子に移る事は許可されていた為、まず娘さんに外出で喫茶店に連れて行ってもらえないか相談しました

仕事の関係でどうしても時間が確保出来ないとの事でしたので、私はない頭を捻って考えました

車椅子に乗り移る→私が車椅子を押して喫茶店→珈琲を飲む→帰院

3単位(1時間)内で収まるではないか!!

『当然だろ、馬鹿か』と言われてしまえば言い返す言葉もありませんが、自ら調べるとコスト算定(お金を頂く)する事は難しいとの事でした

今思えば娘さんに同意を得た上で主治医に『コスト算定は出来ませんが、行っても良いですか?』と確認してみても良かったなと思います

喫茶店は実現出来なかったのですが、女性にはもう1つやってみたい事がありました

『(娘の)車に乗ってドライブしたい』

長期間入院しているので、気分転換したいとの事でした

娘さんは仕事の関係で難しい事を理解していた私は、通所リハ(デイケア)の利用者の送迎時に車椅子のまま送迎車に乗る事を思いつきました

送迎車ならコースは選べないけど、車椅子のまま乗れて、車椅子の固定も出来る、通所リハの職員と私も同乗している状況でドライブ出来ると思ったのです

ただ少なからず振動を伴う為、病的骨折のリスクもある事を踏まえ、娘さんに相談しました

『骨折のリスクはありますが、職員と一緒にドライブするか、骨折のリスクを避けて安静にするかどうしましょうか?』

結果的に娘さんはリスクを避ける事を選ばれました

私は何1つ女性の希望を叶えられぬまま、リハビリテーションは失敗に終わりました

要するに私はリハビリテーションを支援する職種でありながら失敗だらけです

『そもそもそれは理学療法士の仕事ですか?』

『もっと他の患者さんに時間を使うべきでは?』

色んな意見があって然るべきだと思います

ですが、私はこれからも出来る限り『今の自分に出来る支援は何なのか?』を考え続けていきたい

もがき続けていきたい

理学療法士として終末期患者さんのリハビリテーションを支援する事を諦めない

最後に実習生として関わった後輩が書いた終末期リハビリテーションに関する素晴らしい記事と今も大切にしているマザーテレサの言葉を紹介させて下さい

こんな想いを持ちながら、患者さんに向き合える後輩を今でも誇りに思います

まとめ

今回は終末期リハビリテーションについて理学療法士として考えてみました

『人生のたとえ99%が不幸せだとしても最後の1%が幸せならばその人の人生は幸せなものに変わる』

理学療法士として最後の1%に関わる位置にいると思っています

紹介させて頂いた3人の患者さんから聴いた事、学んだ事を今後に活かし、1人でも多くの人に『人生の最後にあの人に出会えて良かった』と思ってもらえたら嬉しいですね

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