少し前の記事で、人は接触する機会が増えれば増える程、相手に対して親近感を抱きやすくなるという心理効果として『単純接触効果』を紹介させて頂きました
今回は理学療法士として働いて来た中で単純接触効果が上手く活用出来た経験を紹介すると同時に、単純接触効果と併用する事でより効果を発揮する『ネームコーリング効果』についてまとめてみたいと思います
理学療法を拒否していた独居の女性
通所リハビリテーションで働いていた時に出会った93歳で独居の女性
高齢とはいえ、日常生活の事は自分自身で出来ていた事もあり『私は元気やし、リハビリはいらん』といつも拒否されてました
そんな矢先に自宅にて転倒され、骨折といった大きな怪我には至らなかったものの、痛みが落ち着くまで当時の勤務先の病院に入院する事になりました
当時の私はまだ心理学に興味がなく、当然『単純接触効果』も知りませんでしたが、病院で着替えて帰宅する必要があった為に『ただ何となく』毎日部屋に顔を出してから退社する様になりました
当時は『痛みはどうですか?』とか『ご飯食べれてますか?』といった感じでガッツリ話し込むのではなく、ほんの一言二言声掛けだけして帰るといった感じでした
『あんた、また来たんか?相当暇なんやな』と笑いながら言われた事は今でも記憶に残っています
数週間して無事に自宅に戻り、通所リハにも再度来て下さる様になったので『どうせ無理だろうけど』という気持ちで『リハビリしませんか?』と声掛けすると
『あんたかいな、しゃあないな、ちょっとだけ付き合ってやろか』
と理学療法を受けてくれる様になりました
結果的に受けてみると動きやすくなる事を体感され、最終的には『娘もリハビリしてやって欲しい』とお願いされる様な関係性になりました
まさに『単純接触効果』が上手く働いた人だったと思います
こういった関わり方には同時に『返報性の法則』も働いているんだろうなと私は考えています
マメな顔出しと声掛けを行った事で、少なからず『私の事を心配してくれてるんだな』という気持ちになった可能性があります(好意が伝わった)
その結果、返報性の法則が働く事で『ちょっとだけ付き合うか』という気持ちになったのかもしれません(好意をお返しする)
この経験だけではないのですが、感覚的に『マメに声を掛ける事で関係性が良くなるな』と感じていた私は患者さんや利用者さん、ご家族への声掛けをマメに行う様になりました
結果的に心理学を学び始めた時に『単純接触効果』と『返報性の法則』いう心理効果がある事を知り『やっぱりか』と腑に落ちたのです
注意点として話し込み過ぎない事
『同じ階の患者さんの所に行くから顔だけ見に来ました』といった感じで顔を出すだけでもOK
単純接触効果で重要なのは『接触時間』ではなく『接触回数』だからです
例えすれ違いざまでも是非一言声を掛けてあげてみて下さいね
精神的な問題を抱える独居の女性
もう1人も通所リハビリテーションで出会った80歳の独居女性
精神的な問題で複数回自殺企図経験がある様な方でした
初めて関わらせて頂いた時のインパクトは今でも忘れられず、無表情で一言の言葉も発さず(もちろん声掛けはしました)に理学療法は終了しました
何度目だったかは忘れましたが(そこまで一言も喋らない)理学療法終了後に『ありがとう』とボソッと言って下さいました
その日まで私に対して言葉を発していなかったものの、理学療法士としては評価して下さっていた様で(介護職員に話していたそうです)理学療法の日を心待ちにされていたそうです
私もめげずに声掛けはしていましたが、回数を重ねる毎に発語は増え『単純接触効果』で少しずつ心を開いてくれている実感がありました
ただこの女性に関しては『単純接触効果』よりも大きな効果があった心理効果があります
それは『共通項・類似性の原理』
共通項・類似性の原理に関しては↓
通所に来る度にTVを熱心に見ている事に気付いた私は職員に『(女性は)何を見てるんですか?』と質問してみると、どうやら阪神タイガースの熱狂的なファンとの事
『これだ!!』と感じた私は理学療法時に『昨日阪神勝ちましたね』と話を振ると『先生野球好きなん?』と返され、そこからはひたすら野球の話に終始する時間になりました笑
私が小中高と野球をしていた事もあり、少しマニアックな話まで出来る事で関係性は一気に深まるだけでなく、日に日に表情が出て明るくなられていきました
私がその職場を離れるまで関わらせて頂きましたが、初めて関わらせて頂いた時と最後とでは同じ人とは思えない変貌ぶり(自殺企図もなくなりました)で、理学療法士として働いていく以上、ずっと忘れる事のない経験だろうなと思っています
身体機能的には介入初期から最後まで大きく変わりはありませんでしたが(元々自立していたので)理学療法士としては大きな変化を引き出せた人であった事は間違いありません
ネームコーリング効果とは?
単純接触効果を利用する際に限った話ではないのですが、日々の業務の中で『ネームコーリング効果』も是非活用して頂きたい心理効果です
アメリカで行われた実験ですが、男女に15分間、会話をさせて相手の名前を呼んだ場合と呼ばなかった場合で、どの様に印象が変わるのかという事を調べました
結果は名前を呼んだ方が
『社交的』
『フレンドリー』
『もう一度会っていたい』
等、相手に対して好印象を持ったそうです
更に『人を動かす』で有名なデール・カーネギーは
人に好かれる6原則の1つとして『名前をしっかり覚える』を掲げています
要するに人は自分の名前を大切に思っているという事です
数回しか会った事がない人が自分の名前を憶えてくれていて嬉しかった経験はありませんか?
同じく人に好かれる6原則の1つに『誠実な関心を寄せる』があるのですが、名前を覚えるという事は相手に関心を持つという事にも繋がるのかもしれませんね
例えば、私は次の様に『ネームコーリング効果』を活用しています
病棟で知っている患者さんとすれ違った時に『こんにちは』ではなく『村田さん、こんにちは』といった感じで単に名前を付け加えるだけです
誰にでもすぐに出来ますよね笑
この誰にでも出来る事を徹底的に、そしてさりげなく会話の中にも組み入れています
LINEの様な文字ベースのコミュニケーションにも活用出来る心理効果なので、是非取り入れてみて下さいね
まとめ
今回は誰にでも実践出来る相手に親近感を感じてもらう方法として『単純接触効果』と『ネームコーリング効果』を具体例を示しながら紹介させて頂きました
臨床実習の現場で実習生と関わらせて頂いている患者さんが凄く打ち解けた関係になる事がありますが、実習生の方が臨床教育者よりも接触する回数も時間も多い事が影響しているのかもしれませんね(単純接触効果)
理学療法士と患者さん、医療介護従事者と高齢者の間だけで活用出来る心理効果ではなく、世代や職種関係なく使える心理効果ですので、宜しければ参考にしてみて下さいね
コメント